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「まあいいや。それで……」
今度は夏美が聞き入る。先ほどまで感じていた不安が、更に広がるような内容だった。
「まさか、この日本のどこかで炎を使ったテロが……?」
「ああ、その恐れがあるようだ。うちの班はやばい案件をかぎつけて捜査して暴いていく事が多いけど、もしかしたら今回は未だかつてないくらいやばいぞ。たぶん公安のテロ対策チームも動く。難しい捜査になりそうだな」
「ファントムという組織は、先進諸国の中枢に食い込んで、協力者を得ているそうです。日本の公安の上層部にもその影響が及んでいる恐れもあります。ヘタをすると、捜査そのものも潰される……」
しばし重い空気に押し黙る2人――。
「夏美……」鷹西の声が真剣さを帯びている。「充分気をつけろ。ムチャはするなよ」
「私は……」鷹西さんとは違います、と言いそうになり止める。そして「大丈夫です。気をつけます。でも、やるべき事はやります」
「夏美らしいな」
彼がフッと笑ったように思えた。鷹西の優しさにふれた気がして、心が温かくなる。しかし……。
「今回は俺がいなくて、おまえの暴走を止められないからなぁ……」
一言多いのだ、鷹西は……。
「どういう顔してそんなこと言ってるんですか? 鷹西さんがいたらもっと暴走するでしょう?」
「なんだと?」
「なんですか?」
言い合いになりそうになったが、そこで急に雑音が混じる。
スマホが混線することなんてあったっけ?
困惑する夏美。
鷹西の「おっ」とか「あっ!」という声が濁って聞こえる。
「どうしたんですか?」
怪訝に思って訊くが、しばらく返事がない。
おかしいなぁ……。
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