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少女は少しずつ歩き出した。夏美が膝を折り、その子の目の高さまで屈む。
「もう大丈夫。お母さんの所まで行っていいよ。さあ」
優しくそう語りかける夏美。少女は頷くと、言われるまま母親の方へ駆けて行く。
母親がしっかりと少女を抱きしめ、泣き崩れていた。それを制服警官2人が支え、離れた場所まで連れて行く。
店内にはその親子以外には警官だけになっていた。他の客の避難は終了したようだ。
鷹西がそれを確認した次の瞬間、少女を押さえていた男が素早く動き、夏美の腕をとる。そして自分の方へ引き寄せた。
「あっ!?」
夏美が思わず叫んでいた。彼女の首筋にナイフがあてられる。
男がガッチリと夏美を押さえ込んだ。他の4人もそのまわりに立ち、四方を見て警戒している。
「さあ、早く車用意しろ。急がないと、この女バラすぞっ!」
ナイフを突きつけた男が叫ぶように言う。
耳元でがなりたてられ、夏美の表情が険しくなった。
「夏美っ!」
鷹西が呼ぶと、彼女は視線をこちらに向け頷く。何かを狙っている。
夏美を押さえた男が、一旦ナイフを前に差し出した。
「車だっ! 早くしろ」
がなりたてている男の腕の中で、夏美の目がサッと鋭くなった。鷹西に向かって口元を動かすだけで言葉を伝えてくる。
い き ま す !
わかった、と目で合図をすると、鷹西は男達に向かって歩き出した。
5人の凶暴な視線が一気に向けられる。
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