SCENE18 泉山森林公園

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 静かになった。風に揺れる木々の音さえ聞こえてくる。その合間を縫って、鳥の鳴き声……。  夏美は身動きができず、ただジッと男の次の行動を待ち受けるしかなかった。  しかし男は、彼女を捕まえたまま動かない。  「……あなたは、何者?」  ついに沈黙に耐えられず、震える声で問いかける夏美。  「知りたいかい? じゃあ、一緒に来る? そうすれば、殺さずに済む」  「私をどこへ連れて行こうというの?」  「どこへでも。それこそ、世界のどこでも連れて行くよ」  「悪いけど、お断りします」  夏美がそう応えると、首に回した腕の力がグッと強まった。  うっ、うぐぅ……。  夏美が苦しさに呻く。  「なら、ここで死んでもらうことになるけど、いいの?」  ジリジリと力を強めながら、男が耳元で囁く。  あぅ、あっ、ああぁ……。い……いやぁ……。  先ほどの大男のように力任せではない。確実に気道を捉えているし、その気になれば一捻りで首の骨を破壊できるだろう。恐ろしさに夏美は背筋が凍る。  男が僅かに力を緩めた。そして、フフッ、と耳元で笑う。  「ど……どうして……一気に……殺さないの……?」  苦しみと痛み、そして恐怖に顔を歪めながらも、夏美が訊く。  「君が気に入ったから。できれば手に入れたいからさ……」  「ふう……」と夏美は諦めたように息を吐き、身体の力を抜いてガックリとした。  「ん? その気になったかい?」  「本当に、殺さないでくれますか?」  「もちろん」  「じゃあ……」と夏美は頷く。だが、彼女の反応に気をとられていた男にできた一瞬の隙を、見逃さなかった。会話の間に男の身体の位置を確認していた夏美は、狙いを定めて踵で彼のすねを蹴る。  グッ、と言って男が力を緩めた。  無理な力をこめずに、流れるように男の拘束からすり抜ける夏美。
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