SCENE19 神奈川県警刑事部捜査一課 徳田班

1/6
116人が本棚に入れています
本棚に追加
/233ページ

SCENE19 神奈川県警刑事部捜査一課 徳田班

 夏美と立木は、県警刑事部に戻るとすぐに徳田に呼ばれた。  公園での騒動の後、2人は機動捜査隊と所轄署による初動捜査に加わった。第一発見者であり、不審な者達の目撃者であり、そして刑事であるという特殊な立場になってしまったため最初は混乱を極めた。徳田の指示により、ようやく戻ってこられたところだ。  通常の流れであれば、所轄署に特別捜査本部が設置されるだろう。夏美達がどう協力していくかは徳田の判断によるが……。  「藤田氏の件は不審死として扱われるが、事件性は薄いという方向で進んでいる」  個室に入ったところで徳田から発せられた第一声が、それだった。  「それはおかしいですっ!」叫ぶように言う夏美。「そんなはずはありません。怪しい男達が……」  「落ち着いて、月岡君」立木が宥めるように言いながら、くってかかりそうなほどになっている夏美を抑えた。徳田に向かい「表向きは、ということですよね?」  徳田が頷く。苦々しい表情だ。  「公安の事案だそうだ。非常に重大な国際犯罪につながっている恐れがあるから、刑事部は手を引け、ということだ」  「刑事と公安が両面から捜査して、お互いの情報を共有し合えば良いと思います」  「そう上手くいかないのが警察という組織だ。あちらさんさえその気になってくれるなら、俺は全然かまわないんだけどな」  至極まっとうな夏美の主張に、肩を竦めて応える徳田。  「私は納得できません。目の前で人が殺されました。街中でも4人も殺されています。刑事事件でもあるんです。しかも、私は犯人かその関係者と思われる男達をとり逃がしました。このままでは引き下がれません」  夏美は必死に訴えかける。そんな彼女を見て、徳田はフッと笑った。  「引き下がるとは言ってない」  「え?」と勢いが止まる夏美。
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!