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その瞬間、夏美が動いた――。
膝を曲げ右足を上げると、後ろから押さえている男の足の甲を思いきり踵で踏みつける。
「ぐわぁっ!」と叫んで男が夏美から腕を放す。それと同時に、彼女は男の胸の下、あばら骨あたりに肘を打ち込む。骨と骨の隙間を狙った絶妙な攻撃だ。あれを受けると、大の男でもしばらく動けなくなる。
案の定、男が呻き声をあげながら屈み込む。夏美は「えいっ」とその男の首筋に手刀を叩き込んで倒した。
「こ、こいつっ!」
右の男がナイフで夏美を襲う。だが彼女は冷静にそれを避け、身体を回転させながら屈み、足を伸ばして男の足を狩る。勢い余った男の身体が宙を舞い、背中と後頭部からフロアに叩きつけられた。
「がわぁぁっ!」
妙な呻き声をあげたかと思うと、男は泡を吹いて失神した。
左の男が夏美に掴みかかる。
彼女はそれを軽くいなし「やあっ!」と後ろ回し蹴りを男の鳩尾に見舞う。
踵が突き刺さるように命中し、男が「うぐっ!」と身体を前のめりにした。夏美はその後頭部に手刀を打ち込みとどめを刺す。男がバタリと倒れた。
彼女はあらゆる武道に精通している。流れるような動きは、まるで舞い踊っているようにも見えた。
残った2人が走り出した。夏美の強さを見て慌てたのだろう。
鷹西が前に立ちふさがる。
「どけぇっ!」
1人がナイフを突き出してきた。鷹西はその腕をつかみ取ると、一瞬で引き込み、そして払い腰で投げ飛ばす。
フロアに叩きつけられた男は、白目を剥いて失神した。
「ちきしょうっ!」とわめきながら、もう1人が必死にナイフを振りまわす。
こちらに鷹西、向こう側に夏美。2人で挟み込んだ。
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