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ぷろろーぐ
古い住宅が立ち並ぶ住宅街。落ち着いた街並みに溜息をついた。
「何でこうなるんだか……」
心の声がそのままもれた。
がっくり肩を落とすのは背中の中ほどまでもある栗色の髪の女性。
三十代も半ばも過ぎお肌の曲がり角などとっくに過ぎてバックストレート一直線。ひたひたと四十路の足音が聞こえ始め日々の疲れはたまる一方。
お陰様でその顔色はよろしくない。名前は桑原瑞樹。
本日、めでたくなく三度目の失業をしたところである。
専門学校を卒業して一番最初に就職した会社はグラフィックデザインを請け負う会社。なんとそこはブラック企業だった。
(社会人一年生、ブラックだなんて分からなかった。社会人というのはこういうものだと思っていたのよね……今思えば、阿呆だわ)
休日出勤に連日の朝方までの残業。
アパートと会社を往復する、否。会社に住んでいるような生活だった。
子供のころから体だけは丈夫で病気とは無縁だったが、入社して半年で体を壊して病院のお世話に。そのままクビを言い渡されて退職した。
ブラック企業のトラウマを抱えて再就職した先は小さな建築事務所。これが不景気の波をまともに被ってあっという間にぱったりと倒産。
やっとこさ見つけた再就職先は不景気の事業縮小でリストラの嵐が吹き荒れていて、満身創痍の瑞樹はあっけなく吹き飛ばされた。
(あたしの人生、ツイてない)
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