花鳥諷詠 アメツチの姫君

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目を開けると蒼い髪に赤い色。 「龍士ッ!」 自分の身体に覆い被さる彼の頭から血潮が幾重にも。 「りゅうじッ!りゅうじッ!」 頭が真っ白になりただ彼の名を叫ぶ。 「・・・・・・また、ひ、とり で・・・・・・」 弱弱しくも私をたしなめる彼の声。 「は、や・・・・・・く に、げ・・・・・・っまた、君を・・・・・・」 「え?」 彼の口から耳慣れない言葉が出る。狙いを外しばらけた鉄パイプが魚の大群のように螺旋状に宙を旋回する。現実とは思えない光景。鉄パイプの大群は私たち目掛けて再び襲い来る。 「――――――ッ!」 龍士の頭を両腕で抱え目をつぶる。 カランカランカラン――――――。 無機質な音が空間に響き渡る。 まるでプツリと魔術が解けたかのように動いていた鉄パイプが一瞬間で地面に散らばる。その音が嫌に不気味に聞こえた。冷や汗が体中を這い浅く速い呼吸を繰り替えす。どくどくと心臓が凄まじく鳴っていた。 「真菜ちゃんっ!」 その直後水野さんが血相を変えて走ってきた。 「・・・・・・水野さん?」 「っ!群青くん! 救急車を呼ぶから!」 水野さんは状況を把握すると携帯で救急車を呼ぶ。両手で龍士の頭の傷を抑えても出血は止まらず後から後から溢れ出てくる。手と服が鮮血に染まっていくのを見つめながら自分の軽率な行動に痛みがこだましていた。
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