花鳥諷詠 アメツチの姫君

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暗くなった夜道を車が滑るように走って行く。オールドローズを手にぼんやりと暗闇にまばらに灯る街の明かりを見ていた。水野さんが来てくれなかったらふたりとも、嫌な現実感に身震いした。なんだか怠い緊張が緩んだせいかどっと倦怠感が身体を侵蝕していく。 今になって思えばこのとき隣でハンドルを握るそのひとを何故不自然だと思わなかったのか。今日起こった説明のつかない異様な事態を飲み込もうとするのに必死だった私には気付く余裕すらなかった。
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