花鳥諷詠 アメツチの姫君

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「このように四方同士が結ばれている状態、これが結界です。各方位は応龍・白虎・鳳凰・霊亀の四神獣によって守られています」 そう言うと先生は東の文字を黒板消しで消し去った。 「こうなると結界を結べなくなり悪しきものが流れ込んで来るというわけです。現在城跡と大名屋敷跡には石碑が建てられ四神相応の地形も白蓮大路と亀甲山しか残っていませんが、大名屋敷跡に建てられた東ビルを含む各方位を司る色に塗られた建造物によってこの街の四神相応が成り立っています。横浜中華街と同じ原理ですね~~~」 ふと教室の窓から見えるシートに覆われた一際高いビル。昔と今では四神相応もだいぶ事情が違うらしい。オリジナル版とリメイク版みたいな感じだなぁと思った。灯台下暗しとはよくいうけれどいつもいる場所にこんな秘話が眠っていたなんて少し感激してしまう。 「ですがここまでお話しした通り四神相応は一つでも欠けると成り立ちません。今現在応龍の相である東ビルが解体中の為この地の四神相応は崩れているといっても過言ではないでしょうね~~~」 それまで胡渡先生の風水談義を興味津々で聞いていたがイキナリの爆弾発言にうろたえる。 だって私があの夢を見始めたのも東ビルの解体が始まってからだ。 「みなみちゃーんじゃあこの辺とか火の海になっちゃうのー?」 クラスメートが面白半分に質問する。 「そんなスペクタクルな現象は起きませんよ~、ただし解体現場は危険ですから良い子のみなさんは真っ直ぐお家へお帰りくださいね~~~」 笑うクラスメートたちとは反対に私は心がざわついていた。 授業終了後私は胡渡先生に詰め寄った。未だにラップ音は鳴り続け今は胡渡先生の頭上で鳴っている。クラスメートの視線が突き刺さる。 「せんせいっ、さっきのこの街の四神相応が崩れているって話―――」 「ああ~少し脅かしすぎましたか~~~すみません風水の話になるとついつい」 あっけらかんとした答えが返ってくる。 「でも、そのために昔あったお城は大火事になったんですよね」 「あくまで伝説ですからね~~~個人的には一因だと思いますが」 「じゃあ」 「東ビルの解体中で四神相応の結界が崩れているとは言っても一時的なものですから。再建されれば元に戻りますよ~~~」 「そうなんですか?」 「朱櫻さん、恐らくあなたのお考えになっている事とは違うと思いますよ。風水は自然科学であり数学的理論ですからね~~~」 先生は私の考えを見抜いているようだ。深刻にならなくても大丈夫ですからね~と言われるがまだもやもやする。すると一冊の本を渡された。 「どうしても気になるのでしたらこれを読んでみてくださいね~~~」
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