花鳥諷詠 アメツチの姫君

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「もう、私はだいじょうぶだってば」 先ほどからの雹は龍士にも容赦なく降り注いだ。 「真菜、あまりひとりで行動しないように」 「いっしょにいない方がいいってば私一人ならなにもないんだから」 バキバキバキッ! 背後から嫌な音が聞こえたと思った瞬間、私は龍士の腕の中にいた。音のした方を見るとたった今私の座っていたベンチに大木が倒れていた。真ん中から無残に折れている。これまでに得た情報と重なり余計に恐ろしくなる。 (やっぱり祟り?) 小さい頃はよく東ビルの屋上遊園地で遊んでいたけれどもう7年くらい行ってない。そもそも私自身東ビルとは何の関わりもない。 「・・・・・・ほらっ、やっぱりわたしとはいない方がいいよ」 たくましい腕の中から主張した。身長差で顔に届かないため必死に身を乗り出す。 「俺は何があっても真菜から離れない」 真剣に言われドキッとした。龍士とは付き合いが長い。彼が冗談を言わない堅物なのは私が一番よく知っている。商店街での花瓶の一件もそうだけど軽くはない私の身体をいとも簡単に持ち上げてしまうことに男の人なんだと意識せざるを得ない。 「じゃあ真っ直ぐウチ帰るから!それならいいでしょっ どの道みんなさっさと帰れって感じだから」 「――――――わかった、帰宅したら連絡するように」 「はーい」 煩悩を滅するようにまくしたて彼の望む偽りの返事をした。 心配してくれるのはありがたいがなるべく一緒にはいたくない。一番被害を被っているのは龍士だ。元凶であるわたしは一切被害に遭っていない。これ以上幼馴染を巻き込みたくなかった。 放課後授業終了のチャイムでわたしは学校を飛び出した。クラスメートは掃除当番をアッサリ代わってくれた。怪奇現象と天秤にかけたら言わずもがなの結果だろう。 花屋の前に差し掛かり何気なく店内を見やるが水野さんは配達中らしい。 家に着き帰宅完了メールを龍士に送信。時が来るのを待った。
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