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桃太郎
むかしむかし、あるところに、
桃太郎という少年がいました。
彼は力持ちできれいな心を持っており、いつでも正直で、真面目で、言われた事を素直に聞く、とてもかしこい少年でした。
「おじいさん。僕の名前は、どうして桃太郎なのですか?」
ある晴れた日のこと、桃太郎は家の縁側で鉄砲の手入れをしているおじいさんに聞きました。
「それはな、むかしむかし、川に大きな桃が流れてきてな。
その桃を真っ二つに割ったら、中からお前が出てきたのじゃ。
お前は桃から生まれた子故、桃太郎なのじゃ。」
おじいさんは鉄砲の手入れをしながら、ニコニコと笑顔で語りました。
桃太郎はおじいさんの隣にちょこんと座っていて、しきりと感心しながらおじいさんのお話を聞いています。
おじいさんは桃太郎にいつも優しく、とても大事に大事に育てていました。
おじいさんは桃太郎にいろんなお話をします。
この村のお話や、桃太郎が小さい頃のお話―――
そして、海を挟んだところにある、鬼ヶ島という島のお話。
桃太郎はいつでも、おじいさんのお話をとても素直に聞いていました。
「しかし桃太郎よ。お前は幼子だった故、覚えとらんと思うが、むかしこの村は鬼ヶ島に住む鬼達に襲われてな。その時に村の財宝を全て奪われたのじゃ」
おじいさんは最初はニコニコしていたものの、話が進むうち、しだいにその顔から笑顔が消えていきます。
「ワシはいつも山に薬草を採りに行き、時々この鉄砲で獲物を仕留め、それで今日まで生活してきたが……。やはり村の財宝を奪われたせいで、生活は厳しくなる一方じゃ。いつかは鬼達から財宝を取り返さねばならん」
「おじいさん。僕はおじいさんの言いつけどおり、日頃から武術の鍛錬を欠かしておりません。いつか僕は鬼が島に行って、悪い鬼たちをやっつけてやります」
桃太郎は少年ながらも、凛々しい顔つきで言いました。
「ワシにとってお前は我が子同然じゃ。それなのにワシは何とも頼りなくて、本当に申し訳ない。」
「何を言うのですか。おじいさんは今まで僕をとても大事に育ててくれました。僕にとっておじいさんは親も同然です。それにおじいさんは村一番の薬師です。おじいさんが作った薬は魔法のようだと評判です。僕はそんなおじいさんの側にいることを誇りに思います」
桃太郎はそう言って立ち上がると、いつものように木刀を引っ提げ、玄関へと向かいました。
「それでは、武術の鍛錬に行ってきます。」
そして彼は一言そう残すと、そのまま家を飛び出していきました。
桃太郎はとても素直で、とてもかしこい少年でした。
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