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第壱章:最強の守護霊
「…お前、いつ見てもやっぱり凄いのが憑いているよな…?」
「またそれかよ…」
俺の名前は折笠裕也。
何の変哲もない血気盛んな高校2年生だ。
そして、俺を…いや、俺の後ろを見ながら引きつったような顔を浮かべるのは、俺の親友である黒部慎吾。
慎吾とは小学生の頃からずっと一緒で家も近く、家族ぐるみで仲がいい所謂幼馴染というやつだ。
慎吾の実家は由緒ある神社で、代々続く神職を生業としている両親の子供という事もあってか、昔から霊感があるらしい。
ちなみにだが、俺には霊感なんてものはない。
幽霊だって見た事はないし、怪奇現象とか心霊番組とかも信じてないタイプの人間だ。
だから慎吾も、最初は見えてないのに見えていると嘘をついているだけだろ…くらいにしか思っていなかったのだが、一緒にいる内に慎吾の言っている事は本当なのだと信じるようになった。
そして極めつけが、俺の後ろに凄いのが憑いているとかなんとか言っているこのやり取りだ。
「…マジでいい加減聞き飽きたんだけど…」
実を言うと、慎吾が誰もいない俺の背後を見ながら”凄いのが憑いている“と言ってくるようになったのは、小学生の頃から始まっていた。
「なぁ、ゆうや?なんでお前に“ソレ”が憑いているんだ?」
「はぁ?ソレってなに?」
「…」
小学生の時、始めて言われた時はさすがにビビった。
だって、何度見ても誰もいないのに、慎吾はまるでそこに誰かがいて、その人と普通に話をし始めるんだから。
そりゃあ怖いだろ。
「おれは、くろべしんご。お姉ちゃんはだれ?…うん…うん…へぇ、そうなんだ」
「お、おいしんご!誰もいないのに誰と喋ってるんだよ!」
目線を上げて誰かと話をしながら相槌を打ち始める慎吾にゾッとした。
「え?ちゃんといるよ?おねえちゃんが」
ホラ、見えるでしょ?と言って慎吾が指を差す方を見るが、そこにはやっぱり誰もいない。
「はあ!?いないから!!怖いこと言うなって!」
見えない誰かに向かって自己紹介を始めた時は本当に怖かった。
性格上、慎吾は嘘をつく事はしない。
だから尚更、慎吾には俺には見えない“何か”が見えているのだと感じた。
その後、中学生になっても…
「相変わらず凄いな。お前の後ろの人…。前より凄い力を感じる…」
慎吾が俺の後ろを見て言ってくるこの会話は続いていた。
いや、いつまで続くんだよこの会話…
「…前から聞きたかったんだけどさ、俺の後ろにはどういう人が憑いてんの?」
「綺麗な女の人」
「はぁ?いや、綺麗とかそういう話じゃなくて!どういう幽霊なのか、なんで俺に憑いているのかを聞きたいんだけど」
「――さぁ?」
少しだけ間を置いてから慎吾が返事をする。
「はぁ!?そこまで視えて話せるなら、それくらい聞けるだろ!」
「教えてくれないんだから、仕方がないだろ?」
「…」
意味がわからねぇ…
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