第二章 ―  裏切 ―

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第二章 ―  裏切 ―

巨大地震による国会議事堂の半壊――、 新政府が動き始める中、総理官邸内一室には権力者が集い議会が行われていた。 「崩壊した日本再建に向け、ここにいる我々はせねばならない」  総理が発した言葉の意味は、足並みを揃え進むべき道の意思疎通である。 本国の人口およそ一億二千五百万人に対し、巨大災害を受け現在の人口は八千万人に減少と予測されていたが、各都道府県の行政も崩壊しその数は定かではない。 「先ずは復興、社会として機能させるべくここ東京を優先し小さな都市開発を進める」 「総理、お言葉ですが、国民は首都にのみ存在する訳ではございません。首都を被害の無い地方へ移転する考えはございませんか?」 「地方の人間など自給自足で何とか食いしのぐだろう。ここにはまだ有効利用可能な建築物、ライフラインなど少し手を加えるだけで復旧可能な場所が点在している。今更、地方に新たに構築する時間などない」  総理の発言に権力者達は耳を傾ける。小規模なりとも首都再生を行い、社会的に有能な人材とされるA級国民を優先し保護してゆく意向を伝える。  A級国民とは、議員、医師、弁護士、高額納税者、高学歴者を指し示し政府は密かに国民に対し優先生存させるためのランク付けを図っていた。長い年月をかけ浸透させた国民一人ひとりに対し発行された個別番号。単純に振り分けた番号ではなく、先頭、末尾の番号が暗号化され既に、有事の際の命の重さは振り分けられていたのである。 「国民を騙すおつもりですか!」  一人の権力者の発言により議会に張り詰めた緊急が走る。 「峰岸君、言葉に気を付けたまえ。国内における物資供給は既に崩壊している。これまで一歩外に出れば飲食など手軽に口にしていた時代はもはや幻想だ。生き延びた人口分の食料は無い。長期化する程、取り返しがつかない」 「軍並びに政府に緊急用の食料備蓄がある筈です。崩壊した関西エリアにもまだ生存者は存在する。同国民として物資供給を行い助け合うべきです。このままだと暴動は大きくなり、まともな食べ物にありつけない者達には死や、疫病など――」  総理は瞳を閉じ静に頷く中、数名の権力者は声を上げ峰岸の発言を制止する。 「同国民だが、反逆者として彼らは強奪や犯罪行為を繰り返し、国内の安全を脅かしている。彼らは反政府軍として多くの地域に点在し存在する危険人物達だ!」 「それは政府が希望を示さないからです。自衛隊をすぐさま派遣し、航空機により上空から食料を供給させるべきだ。地域ごとへ政府と直結した取りまとめを行う人材を派遣すべきです。彼らが反政府軍として対立するのは、待ち受ける空腹と死の恐怖心からです。食料と医療を与え、対価とし再建すべく労働力を手に入れ共に再建を――、必要なのは銃じゃない。対話なんです!」 「カチッ」  正論を振りかざす峰岸氏の後頭部に押し付けられた銃口――。  総理は人差し指を立て、彼に語り掛ける。  
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