プロローグ

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 ― 総理官邸記者クラブ ―  テレビ中継を目視しながらじっと総理を睨みつける一人の男。その室内へ総理側近の女性秘書が歩み寄り声を掛けた。 「あら、国の一大事に記者さんがこんな所で油を売っていてもいいのかしら?」  男は白煙を吐きながら口元を緩める。 「全国民が生中継に目を向ける、そんな分かり切った事実を記事にするよりも俺にはこの一本の煙草の方が大切だ。まぁどこに行っても煙草を吸うには肩身の狭い世の中だったが、崩壊した今の社会の方が俺には住みやすい」 「そう、残念ね。新政権は発足された。これからは以前の様に行政が動き出し社会が作られる。精々今のうちに沢山吸う事ね」  総理側近である彼女がワザワザ記者クラブ控室に足を運ぶことに疑念を抱いた男は、まだ半分も吸い終えていない煙草を押しつぶし消した。 「計画通り進んだ発足に、美人秘書の彩希(さき)様は何かご不満でも?」  男の問いかけに彩希は真剣な面持ちで問いかける。 「事前に反政府軍から脅迫が……。都内二十校がターゲットに、これまでの様に建物爆破などの心配をしていたの。でも……、異常を知らせる連絡は皆無」  彼女は手にしたリストを男へと手渡した。 「警察、特殊部隊、陸軍総動員で避難警護に当たっている。総理のご子息の無事も確認できた。反政府軍の目的が分からないの、これまでの素行からとても黙って新政権発足を容認するとは思えない」 「……」  記者クラブに映るモニターには、吐き気がする程のカメラフラッシュが放たれ総理は得意げに微笑みを浮かべていた。   「脅迫はいつ?」 「丁度、会見の一時間前」 「警察、特殊部隊、軍隊、総動員……、 ふっ、直前の脅迫で判断を鈍らせた反政府軍の勝ちかっ」  耳を疑うような男の言葉に、彩希は強い口調で詰め寄る。 「(れん)、一体どう言う事!」
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