プロローグ

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 漣が手にしたスマートフォンに映し出された都内地図。脅迫された二十校の学校施設は総理官邸を含め、全て都内東のエリアに集中していた。 「都に隣接する西側に位置する陸軍自衛隊駐屯地。奴らの目的は初めからココで間違いない。新政権に対抗すべく必要なもの――、それは武器だ。感情的な指揮で指示した総動員。有能な兵士ほど正義を振りかざし真っ先に任務遂行するだろう。手薄になった駐屯地武器庫は反政府軍により占拠され、弾薬、銃器、軍事車両も既に……、The end(おわり)」 「軍から略奪――、そ、そんな……」  漣の推理に不快感を抱きながらも真相を確かめるべく彩希は陸軍駐屯地へ連絡を入れるが、繋がる事は無かった。この事件をキッカケに新たに勢力を増した反政府軍、新政権との武力抗戦はこうして始まりを迎えようとしていた。  全ては総理の耳に告げられ、事実を知った彼は信頼すべき側近秘書彩希に弱音をみせ落胆する。 「我が子を標的と察した誤判断により、私は何てことをしてしまったんだ。軍、警察機関における上層幹部の誰一人として奴らの計画に気がつかないなんて、国を支配するプロ集団が何故、学の無い無能な悪人共に――」  肩を落とす総理を目の前に、彩希はそっと手を差し伸べる。 「総理、お言葉ですが……、粉々に崩れた社会の再建はこれまでの考えを捨てないと成し遂げられません」  深い睨みを効かせる総理は彼女の言葉に、(わら)をも(つか)む思いで(すが)る。 「な、何か策はあるのか?」 「学のある彼らは我が国の誇りであり、任務遂行する行為は敬意にあたります。これからの社会を構成するためには秩序と理性ある彼らの存在は必要です。ですが、その優秀な彼らにない物が一つ……」 「構わぬ、遠慮せずに述べよ」  彩希は微笑みながら総理へと、対等な態度で告げる。 「それは――、悪」 「……悪?」 「目には目を、悪には悪を――」  警察、軍事学校等、正義たる職を目指す者達の遠い存在、それは前科。犯罪行為を成し遂げない彼らに、悪の本質は見抜けない。彩希はそう言葉を添え総理の耳元でそっと囁く。 「犯罪者だけで構成する特殊部隊を作るのです。 勿論極秘に――、 今のあなたなら、それが出来る――」  こうして、国家再建に向けた極秘プロジェクトは始動した。  
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