第一章 ― 罠 ―

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 ― 凶悪犯罪者特別収容刑務所 ―  巨大地震における建築物への被害が発生する中、強固に建築された各地の刑務所は広い敷地にも恵まれ、一時避難施設とし現在も使用される。その為、軽犯罪者達は地方収容施設へと移送され、殺人、傷害罪など重犯罪歴のある者達は世間に知らされる事無く特別収容刑務所として地下牢獄へと移送されていた。 汗臭い異臭を放つ男達が鉄格子の中に押し込められる中、一人の記者は全裸のまま牢獄へと投げ入れられる。 「ドサッ」 「囚人番号、八百十七番! 精々可愛がってもらいな」 無造作に投げ入れられた囚人服。恐らくまともな洗濯等していないのだろう、鼻に付く生臭さですぐに気づく。止む無く手にしたズボンを直に履こうと片足を上げた時、背後から全身魔術の様な文字の刺青をした男が抱きつきながら腰を振り下半身を押し付ける。 「ハァハァハァ――、 おおぃ新入り! すぐに済むからじっとしてろっ」   長い獄中生活で頭の狂った男の歓迎に多くの新入りは屈していたのだろう。周囲の囚人達は皆、見てみぬふりをする。 「ハハハッ、もっと暴れろっ! その方が興奮するぜっ」 やがて羽交い締めした全裸の男に対し、自らのズボンをずらし卑猥な行為にかかろうとした次の瞬間、刺青男の顔面に強烈な一撃が放たれた。 「シュッ――、ボコッ」 「ごぐぅぅっ……」 「ドスンッ」 男は受け身を取ることなく、真っ直ぐに後頭部を硬いコンクリート床にぶつけ倒れ込んだ。意識を無くした男の頭部周辺に生温かい深紅色の血液が広がる。 「ピィピィピ――!!!」  突如耳に届く笛の音と共に警棒を手にした複数の看守達が姿を現す。 「ギィ――ッ、ガチャン!」  開かれた牢獄の扉、ズボンを半分おろし無様な下半身を露出したまま倒れた血まみれの男の姿を目に看守は全てを悟る。 「医務室へ連れて行け!」  無期懲役で多くの囚人たちをこの目で見て来た。新入りは皆同じ様にケツの穴を掘られ、いかれた男達の性処理に利用される。 『あの刺青男を倒しやがった……』  囚人たちは皆、新入りに対し称賛する眼差しを向けるが、それもほんの数秒に過ぎない。瞬きをした後は、哀れみの視線を男に注ぐ。  その眼差しこそが、第二ラウンドの始まりだった……。
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