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平穏だった頃の日本では通り魔や強姦、強盗などの凶悪犯罪と出会う確率は海外と比較すると非常に低い。しかし、新聞やテレビ、ニュースなどにより報道される暴力や殺人の被害情報はあとをたたない。
それでも殆どの人間の思考は――、
他人事だろう。
だが、肩がぶつかる事や、酔っ払い同士のいざこざ、煽り運転など、日常に潜む些細な出来事に巻き込まれる可能性は誰にでもある。そう、自らが当事者となるのだ。
その時、目の前に社会を守る中立な警察官や良識のある市民が現れるとすると、きっと安堵の表情を浮かべるだろう。目の前に立つ警棒を手にした八名の看守。牢獄の中で男が浮かべた安堵の表情は直ぐに恐怖へと変化する。
刺青男を引きずりながら運び出し、残像の様に残る真っ赤な血液の道筋を辿るその先、視界に映る牢獄の扉は再び閉じられた――、
「ギィ――ッ、ガチャン!」
『どうやら……、味方ではなさそうだな』
振り上げられた警棒が男の頭部、脇腹、太もも、そして顔面へと一斉に襲い掛かる。
「ボコボコッ、ガシャーン! おらっ! 立て!」
足先に鉛の塊が込められた看守用革靴で執拗に蹴られ、避けた先に待ち構える無数の警棒が大きく振り下ろされる。
「ガツッ グボッ!!」
第二ラウンド――、それは秩序を守る筈の立場である看守による暴行。刺青男を一撃で倒した全裸男、剛腕な鍛えれらた肉体を持つ男に微かな期待を寄せ見守る囚人もいたが、男は一撃も反撃をすることなくその場に崩れる様に倒れ込むとまるでダンゴムシの様に小さく丸まり気絶するまで殴り続けられた。
「ハァ、ハァ……しぶとい奴だ、やっと気絶しやがった。
囚人、八百十七番! 独房へぶち込めっ!」
「ザザザ――ッ」
二人の看守に引きずられる全裸男。牢獄の床には、再び新しい血の道筋が描かれてゆく。
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