世界の終わりの第一歩

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 部屋の整理の合間に、僕はふらりと散歩に出かけた。僕の住むアパートの近くには、川が流れている。僕は河川敷沿いの土手道を歩くのが好きだった。  川辺を吹く風が心地良い。川面が日の光を受けてキラキラ輝いている。全てバーチャルではあるけど、僕はこの景色を美しいと思う。  道には同じように散歩している人が何人かいて、すれ違う時に軽く挨拶をして来たりする。ゆったりとしたこんな時間が気に入っていた。他の世界でも、こんな風に暮らせたらいいな。 「よう、ヒロヤ」  向こうから、友人のケントがやって来た。彼はこの世界で出来た友達の一人だ。少しチャラそうな感じのアバターを使っている。親しくしてるけど、僕は彼が何処に住んでいるかは知らない。すぐ隣かも知れないし、地球の裏側かも知れない。そんなことはどうでもいい。今ここで顔を合わせてしゃべれるということが全てだ。河川敷に座って、少し話をすることにする。 「ここで話せるのもあと少しか。ヒロヤは次はどんな世界に行くんだ?」 「ここが気に入ってたからね、似たような雰囲気のところを探して住むことにしたよ。ケントは?」 「あっちこっちの世界を回ってみるさ。のんびり出来そうなところがあれば定住するかも知れないけどな。ここも気に入ってたんだけどな」  と、ケントは声をひそめた。 「今回の世界のサービス終了、メンテナンスってことになってるけど、本当は違うらしい」
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