世界の終わりの第一歩

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 ネットを介してあれこれ手続きをしてから、僕はニュース動画とかをあれこれ見てみた。パンデミックはワクチンや特効薬が開発されて治まったものの、僕みたいに仮想世界から出て来ない者が多かったらしい。  それに逆張りするように出て来たのが現実主義者だ。彼らは人々を無理やり現実に戻そうと画策し、世界のあちこちでトラブルを起こしているという。  記事や動画をあさっているうちに、うっかり現実主義者の流しているプロバガンダ動画を踏んでしまった。彼らは自分達の正当さを声高に主張し、仮想世界がいかにAIの支配下にあるかとか、現実で苦労することこそが人間を成長させるかとかいうことをアピールしていた。  自分達の考えを正しいと信じて微塵も疑わないその姿を見て、僕の中からじわりと、だが激しい怒りが込み上げて来た。ケントは擬似人格だったかも知れない。でも、僕にとっては得難い友人だったんだ。こんな奴らのせいで、僕は好きだった生活も友人も失うことになったのか。  僕らは確かにAIに支配されているのかも知れない。でも、そっちだって独善的な正義とか思い込みとかに支配されてるんじゃないか?  ……奴らの拠点を探さなきゃ。そして、武器になるものも。こんな考えがすんなり出て来る辺り、僕は相当怒っている。でも、仕方ないよね? そちらが先に手を出して来たんだからね?  携帯端末の検索結果を頭に叩き込み、ドアのノブに手をかける。ドアをくぐりながら僕は、こうやって世界は終わって行くんだろうな、と漠然と感じていた。  世界の終わりへの第一歩を踏み出して、僕は外へ出た。
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