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2話 再生
橙色の灯が街を照らしていた。
どこからともなく吹き込むビル風が僕を吹き飛ばそうとする。僕は思わず、体を縮こめる。
とてつもなく強い風だった。その風のおかげか街頭が一斉に消えていき、街は停電でもしたかのように静まりかえった。
僕は気にせず、歩き続けた。というのも、先程の女子高生の言葉が気になっていたのだった。
「見つけたぞ。」
確かに彼女はそう言っていた。正確に言うと、頭の中で彼女の声のようなものがしたのだ。
あれは一体何だったのか、そんな事を考えながら帰路を歩いていたが、誰かに付けられているような感覚がした。
僕の歩くスピードと全く同じ速度で歩いて来るのだ。僕が止まると、音も止まり、僕が歩くと音は始まる。僕は怖くなって急いで振り返った。しかし、そこには誰もいなかった。
見えるのは自動販売機の明かりだけだった
心臓が割れそうになり、額に汗が滲む。しばらくそのまま静止していたが、早く家に帰ろうと踵を返した時だった、声がした。
「見つけたぞ。」
野太い声だった。変声機でも使っているのだろうか。僕は声の方に振り返る。
そこには黒ずくめの大男が立っていた。身長は優に2mは超えているだろうか。
「あのお方のご命令だ。」
男はそう言って僕の頭を鷲掴み、静かに叫んだ。
「クラッシュ。」
男の手は血管が浮き出て、みるみる力が増して言った。
僕の頭はどんどん潰されていき、僕は悲鳴をあげる。
その瞬間、僕の頭は破裂したオレンジのように粉々になった。
正確に言うと粉々になった時の意識はない。
何かテレビの電源でも切るかのようにプツンと視界が暗転して消えたのは覚えている。
じゃあ、どうして僕が粉々になったのか認識できたかと言うと、2つある。
ひとつは、この大男が僕の頭を綺麗さっぱり、治したからであった。
もう一つは、僕の頭の肉片だった。
髪の毛までしっかり付いている肉片が地面に飛び散っていたのだ。
地面は僕の赤い血液で、まるで水風船でも破裂したかのように飛び散り、池ができていた。
僕はその池の中心で仰向けに寝そべっていた。
「くそ、何だよ。死んだのか?俺?」
と僕が叫ぶと男はニンマリと笑って、顔を近づけた。
「おめでとう。これでお前も生まれ変われた。」
「生まれ変わった?何を言っている?」
男は僕の事など気にもとめず、笑った。
暫く笑い続けて、最後に大きな溜息を吐いた。
僕は意味がわからず声が出てこなかった。
状況が全く把握できない。
「ママの慈悲だ。さあ行け。」
「行く?どこに?」
僕がそう尋ねると、男はまた何か唱えた。
「ホール。」
男の言葉に反応してか、僕の周りに出来ていた池が振動し始めた。アメンボでも通ったかのように波紋が起き、
その波紋と波紋が共振しあって大きなうねりとなっていった。
そうして、そのうねりは僕を包みこみ、飲み込まれてた。
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