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5話 世界
人が先か魔法が先か。その問いは、鶏が先か卵が先かの問いによく似ている。人がいたから魔法が生まれたのか、魔法が存在したから人がそれを使えたのか、それはどちらも分からない。ただ、この世に存在するもの全てが魔法を使えるようになった起源は存在する。
元々、魔法を使えたのは限られた者だけであった。魔法を使える者は、人々に力を還元し、ある者は雨を降らせ、恵みを与え、ある者は人々の傷を癒した。そうやって、世界の平和に尽力を尽くしていた。
しかし、ある時そこに一つの火種が生まれた。一人の男がその力を使い、世界の全てを奪おうとした。その男は純粋な悪、生まれながらにして悪意に満ちていた。
そうしてその男には巨大な力があった。男がその力に気づいたのは幼少の頃だった。男が家の近くのバッタを捕まえ、足を引きちぎって遊んでいた。というのも、男はバッタが自分の言う通り、行動を示さないためイラついていたのだ。男はバッタの足を全て引きちぎると、右手でぐちゃぐちゃに握り潰した。そうして、ゆっくり手のひらを開けるとバッタは元通り綺麗に修復されていたのだった。
男はバッタに命令する。
「飛べ。」
バッタは暫くの間飛び続けた。男が次の命令を言い終わるまでずっと繰り返し続けていたのだった。男は自分に支配する力がある事を認識したのだった。
そうして、男はまず、人を支配しようと考えた。自分の手駒にしようとした。男は力を使い、まず自分の国の人間を支配した。
そうして、男は国を手に入れると今度は隣国に手を付け始めた。戦争で国を奪い、力は肥大化していった。そうして、とうとう世界は男の者になり、男は巨大な帝国を築き上げた。そうして、帝国は2000年続いた。
「今の話は、神話だよ。トゥワルファリンの神話、2000年前のね。」
グリーンウッドは静かにタバコを吹かしながら言った。
「ずっと前の神話さ。おとぎ話と変わらない。信じてる奴なんてそんないないさ。」
「それでこの話が何につながっているんだ?」
「元々、私達の会話や、行動は全て記録され、監視されているのさ。」
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