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6話 グリーンウッド
グリーンウッドは右手にショットガンを持ち、銃身を僕の後頭部に向け、口元にタバコを咥えていた。
相変わらず爬虫類のような赤い眼球はギョロギョロ動き回っている。ハエでも追っているのだろうか。
気味が悪いからやめて欲しい。
「あんた記憶がないんだろう?話ならさっき聞こえていたよ。あの女が派手に指さしてたからいやでも気になるよ。」
「分かった。飲んだらまずいのは本当に分かった。だからこの銃おろしてくれないかな?」
「念のためさ。あの女の爪を触ったんだ。あんたは今自分の意思で判断決定できる状況じゃないよ。あんたには暗示がかけられているのさ。」
「暗示?」
「魔法さ。相手に自分の特定の一部を触らせ、暗示を書ける。ラッド族のやりそうな事さ。」
グリーンウッドの話をきていると少ししっくりきた。というのも、僕はそもそもお酒がそんな好きじゃない。
会社の飲み会でもいつも合わせてビールを飲むだけで、基本はソフトドリンクを飲んでいた。
「まあ、あの女はもう帰ってこないよ。」
そう言ってグリーンウッドはタバコをふかした。
「何で?」
「治安維持隊の回し者だからね。あんたはみせしめにあったんだよ。こういう酒場でルールを破ったものがどうなるのか私達への見せしめだよ。」
グリーンウッドは僕の顔をちらっと見て、鼻で笑った。
「驚いた、本当に何を言ってるかさっぱりって感じだね。あんたの記憶がないっていうのも嘘じゃなさそうだ。しょうがない。」
そう言ってグリーンウッドは椅子を引き、僕の対面に座った。あいかわらず、銃身は僕に向けたままだった。
「これは除けてくれないのか?話入ってこないんだけど。」
「だめだよ。まだ、暗示が終わってないからね。」
「そもそもあんた、この世界がどう見える?」
「魔法が使える世界。」
と僕は短く答えた。
「そう、ここでは魔法が使える。例えば、物を動かしたり、物を浮かしたり、ほらこうやって。」
そう言って、グリーンウッドが何かを引き寄せる動きをして見せると棚にあった酒瓶が、彼女の手元に飛んできた。
「飲みたいんだろう?私も腕が疲れた。」
そう言って彼女はショットガンを下ろし、僕のグラスに注いだ。
僕は慌てて口に入れた。というのも彼女の話の最中にもヒーラのビールが気になっていたのだ。
「さあ、これで話が聞けるってもんだ。」
そうしてグリーンウッドはこの世界について話始めた。
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