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7話 ニック
グリーンウッドの会話を遮るように、入り口で爆音がした。入口の扉は吹き飛び、白煙を立ち昇っていた。その煙の中から人影が見えた。長い耳の人影が近づいてくる。それはヒーラの人影だった。
「ちょっと、グリーンウッド。話が違うじゃない。ロックはウチで治安維持隊で預かるって話じゃない。だいぶお金は弾んだつもりだったけど?」
「悪いね。他にも金払いがいい奴がいたもんでさ。」
「あんたモテるね。色男。」
グリーンウッドはそう僕の耳元で囁いた。
冗談じゃない。こんな状況まっぴらごめんだ。こんなモテ方望む奴がどこにいる。
「これだから乞食は。だから仕事でもこんなところ来るの嫌だったのよ。負け組がうつる。」
ヒーラはまるで埃でも払うような仕草をした。
「まあいいわ。ロックはウチでいただくから。」
「さっさと死ね。」
そうして、ヒーラは右腕を上げ、指を鳴らした。
その瞬間、周りからうめき声が聞こえてきた。さっきまでお酒を飲んでいた傭兵のような獣人たちが狂ったように叫び声を上げ始める。そのうち、頭を叩き出すものいたが、次第にその声は笑い声に変わり始めた。そうして、テーブルに立てかけてあった、斧や剣を手に持ち始めた。ゆっくり、ゆっくりとまるで獲物でも見つけたかのように口元に涎を垂らしながらこちらに近づいてきた。
グリーンウッドはショットガンを手に取り、リロードした。かちゃかちゃと弾倉が装填されていく音が僕を少し落ち着かせた。
「やれやれ、先手を打たれているとは思っていたけど、こんなにも早く手を打っているとはね。全く。いいかい、ロック。裏口がある。私がこいつを撃ったらそこから逃げな。」
「逃げるたって。どこに?一人でか?」
グリーンウッドはやれやれといった感じで叫んだ。
「ニック!そこにいるんだろう?あんたがこいつを案内しな。」
グリーンウッドの声で、カウンターの下からネズミの男が姿を表した。
「お、おいらが?何で?」
「お前しかいないだろうよ。」
「い、嫌だ!」
「あんた私にそんな事言える立場かい?借金あるだろう?そいつを半分にまけてやってもいいんだよ。」
「喜んで!!さあ、ロックこっちだ。」
ニックはそう叫ぶと、僕を誘導し始めた。
「グリーンウッド大丈夫なのか?」
と僕が尋ねるとグリーンウッドは静かにうなづき、引き金を引いた。
その瞬間、まるで流れ星のように銃口から無数の白い光が飛び出し、放射した。
「また、会えるさ。だからあんたその時までに魔法を覚えておくといい。これは次回までの宿題さ。」
僕は頷き、走り出した。そうして、僕はグリーンウッドの酒場を後にした。
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