9話  町医者

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9話  町医者

なんとか傭兵を巻いた僕とニックは、しばらくガラバス市の宿で潜伏していた。ガラバス市の街並みは最高だった。レンガ畳の路地と、細長いフランスパンを紙袋に入れ走り出す小さな女の子がまるでジブリの世界でも表現されているかのように色鮮やかに僕には映った。 「どうしてここはパスワードでロックされてないんだ?」 「じ、条例でき、禁止されてるからです。」 「なんで?」 「市長が反対しているからです。」 「そんな市長が反対したらなくせるものなのか?」 「い、いえ。そんな簡単な物ではないです。なくしたというよりも、解除させてるに近いです。せ、政府がロックをか、かけているのですが、市がと、解いているのです。」 「魔法で?」 「そ、そうです。」 「凄いなあ、魔法て。なあ、僕にも何か使えるのないのか?簡単なやつ。」 僕がそう尋ねるとニックは暫く唸って考え、歯軋りを始めた。 「一つあります。」 「なに!?」 僕は食い気味で尋ねる。 「お、おいらは光を扱う魔法にたけてます。だ、だから一つだけロックさんがあ、扱えるものがあります。」 「なになに?」 「透視です。」 「とうし?」 「そ、そうです。簡単です。親指と人差し指で輪をつくります。そうしてその輪を覗くのです。ひ、左眼はつぶって!」 ニックいう通りやってみても何も見えない。 「何もみえないよ。」 「あ、おいらを見てください。」 言われた通りニックを見ると、それはまるでレントンゲン写真のように白い骨が見えた。 「こりゃすごい。」 面白くなってついつい、ニックの体をジロジロみる。一周グルって回って、最後にニックの頭を見ると奇妙なアンテナのようなものが見えた。 「これなんかささってるけど。」 と、尋ねるとニックは不思議そうにしていた。 そうして、何か口を開こうとした時、何者かが遮った。 「アルファスじゃよ。」 僕とニックは急いで声の方に振り向く。そこには顎髭を蓄えた知らない老人が立っていた。 「メルソン!」 ニックは叫ぶ。 どうやら、向こうから町医者はやってきたようだった。
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