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「なぁアキヒロ、覚えてるか? このブランコで、どっちが遠くまで跳べるか競ったこと」
長らく手入れのされていない公園は草が生い茂り、使われることのなくなった遊具はどれも錆び朽ちている。
カズマはそこに、遠い日の思い出を映し出しているようだった。
「うん、僕は結局、最後までカズマに勝てなかった」
彼は小さく笑って、「行こう」と言った。
その肩には、この世のことなんかどうでもいいというような顔をして、てんとう虫が止まっていた。
僕らの弟妹が待つ孤児院は、公園から延びる小径を南東に抜けてすぐのところにある。
僕らは孤児院に行って、一体何を確かめに行くのだろうか。
行かなくたって、分かっているはずなのに。
案の定、孤児院は無かった。
『ホープVII』の足跡は、しっかりとこの一帯にまで及んでいた。
薙ぎ倒された平屋の孤児院は、ただの瓦礫と木片となってそこに転がっていた。
僕らが戦場から帰ってくる度に、大声で出迎えてくれたアイツらの姿もそこにはない。
カズマはとぼとぼと、元は孤児院だった瓦礫の山に近付くと、一つひとつ持ち上げて退かしていった。
「カズマ、やめよ」
僕はもう、何も見たくなかった。
カズマは僕が止めるのを無視して、黙々と瓦礫の撤去を続けた。
どこか遠くから、ゴギアアと、『ホープVII』の気味の悪い鳴き声が聞こえた。
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