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「アキヒロ、穴を掘るのだけ手伝ってくれ」
日が沈み始めた頃、彼はそう言ってスコップを僕に投げた。
瓦礫の中から出てきたのだろうか。
「先生も合わせて、二十四。覚えてるよな」
スコップを拾い上げた途端、涙が嘘みたいに溢れ出した。
僕らが命を懸けて戦場を駆け抜けた結果、何を守れたというのだろう。
今まで僕らは、誰のために戦ってきたのだろう。
一つひとつ、時間をかけて穴を掘った。
カズマは時折、汗を拭う振りをして涙を拭っていた。
掘り終える頃には、ライトが無いと何も見えないほど暗くなっていた。
カズマは僕らの家族を一人ひとり、抱きしめるように抱えてきた。
もう誰が誰なのか分からないほど腐敗していたけれど、着ている服に名前が書いてあったから判別はできた。
名前を呼んで、丁寧に埋めてゆく。
思い出と涙も、一緒に土の中に染み込んでいった。
「逃げる間もなかったんだな」
カズマがぽつりと呟いた。
僕らは全員を埋め終えて、家族の隣に並ぶように寝っ転がって星空を見上げた。
「何が『ホープVII』だ。これのどこが希望なんだよ」
完全自律型兵器『ホープVII』。
全長二十二メートル、最高時速六百三十キロの化け物だ。
ただ走るだけでも、街を破壊できてしまうだろう。
元は僕らの国を救うために造られた兵器だったけれど、それが何故か、破壊の限りを尽くす絶望の巨神になってしまった。
戦争は終わった。
僕らの自滅によって。
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