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大山田は青年の手を取り、本当に?と疑問を投げかけた。
「私はもう40歳のおじさんだよ……?君みたいに若くないし、女の子みたいにいい匂いもしないこんな私が可愛いって思えるの?」
「可愛いです、僕にとっては世界で一番可愛いと思いました」
「どういう所が、可愛いのさ。私はみんなに可愛いと言われるけど、それは皆上辺だけさ。だって、みんな、最後は私を手放してしまうじゃないか。可愛いって、なあに?私はみんなにとって、なんなの?」
大山田は憂いていたことをその青年にぶちまけた。
すると青年は思わず大山田の頬に口づけをしてこう言った。
「可愛いは、正義です!あなたのそういう所も、見た目も、とっても可愛いじゃないですか!もし、僕を愛してくれるなら僕は一生貴方を愛します!」
と青年は叫んだが、大山田は別の事を考えていた。
(私が、誰かを愛したことがあっただろうか)
人は大山田を愛するのだ。
だけれども大山田は人に愛されることばかり考えて、自分が誰かを愛することをすっかり失念してしまっていたのだった。
嗚呼、と大山田は微笑んだ。目の前の青年を愛そう。そして愛されよう。
その大山田の顔と言ったら。大輪の薔薇よりも美しく、愛らしいものだった。
そう、40歳にして大山田はまた、覚醒したのであった。
大山田は青年と恋人になった。青年は童貞であったので、大山田は全てを教え込んだ。可愛い、可愛い、と言いながらベッドで青年を慈しむ。今まで誰かにしてもらった奉仕を青年に返す。
健康で若い肌の項から、ついばむようなキスを足の小指まで繰り返し、快感に震える青年の初々しく誰にも使わなかった性器を頬張る。舌で悪戯に刺激を与えながら小悪魔風に、青年を惑わす。
「これを、どうしたい?」
「お、大山田さんに、挿れたい!」
「どうしようかなあ?こんなに大きくて元気な息子クンが私の中に入って暴れたら壊れちゃうかも……」
そう言いながらちろちろ、と亀頭を舐めまわす大山田の痴態に青年は我慢がならず、押し倒す。
「大山田さん、僕、僕、幸せにしますから……!」
そう言って荒々しく大山田に覆いかぶさり早急に大山田の秘部に性器を挿入する青年の体にしがみつき、大山田は可愛く喘ぐのだ。
「あ、あん……そんなに最初から動かないでえ……、気持ちよくて……イッちゃうから……!」
「大山田さん……」
「駄目、駄目なの……君と一緒にイきたいんだもの……!」
「大山田さーん!俺、俺、世界で一番幸せでーす!!」
青年は泣きながら激しく大山田を抱き、絶頂に昇りつめた。
当の大山田は幸せだなあ、と思いながらも物足りなさを感じていた。
当たり前である。手練手管を熟知した男達を渡り歩いてきた大山田にとっては無垢な青年では、物足りないのだ。
ささやかな幸せ。
幸福ではあるが満足がいかない。
ならば、と大山田は思った。
(一本だから駄目なのだ)
大山田に小薔薇が一本寄り添う。
小さくて可愛いけれど、それでは余りにも釣り合わない。
だから、沢山の花束にすればいいのだ。
大山田は買ってもらったマンションでカウンセラーをやることにした。恋の悩みや仕事の悩みを吐き出す男性専用の個人カウンセラールームである。そこで大山田は待ち構える。訪れる可愛らしくも、立派な雄の顔を見せる若者達を。色とりどりの花たちを。時には蜜蜂のような鋭い針を持った怪しい男との恋もいい。乱暴に扱われると、余計に大山田の可愛さがにじみ出る。可愛いくて、いやらしい。
「あんた、俺を誘ってただろう。ここに来ると男が好きになってしまうともっぱらの噂でね、物は試しと来てみたが……噂もたまには本当の事があるんだな。あんたみたいな中年のおっさんが、たまんなく可愛く見えてしかたがない。一体どんな仕掛けなんだい?」
若くて、危険な男が床に大山田を押し倒しながら口づける。くすん、とウソ泣きをしながら大山田は危険な男に縋るような眼差しをむけると。
もうその男は大山田にメロメロになる。
「私はなにもしていないよ……。ただ君を好きになっただけ……。それだけじゃあ、駄目かしら」
「畜生、この魔性め。性悪女よりもタチが悪いぜ。本気で好きになりそうだ」
そう言って危険な男は大山田を激しく抱く。テクニシャンな男の技に大山田は身を委ね、可愛く喘いだ。
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