美しい馬とマントの男

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美しい馬とマントの男

またクレアさんとミカが楽しく暮らせるように… 僕はそれだけを願って王宮へと急いだ… その甲斐あってか…なんとか午前中には城下町の入り口の門にたどり着いた。 この髪の色でまたモメることは避けたいので、持ってきたニット帽を取り出して被った。 それを見たミカちゃんは 「あ〜純くん。オシャレだね。私も帽子欲しいなぁ。ねぇねぇ…私にもまた貸してよね。」 こういう時、僕はむしろ彼女が天真爛漫なミカちゃんで良かったと思う。 彼女の雰囲気にどこか癒されるなぁ。 「わあ…」 門をくぐって街に入るとその活気に驚かされた。 賑やかな音楽を演奏する人々… 様々な商品が並ぶ屋台…中には少し怪しげなモノを売っているお店も!!! 広場では大道芸人が自慢の技を披露している… 「これは凄いな…さて…これからどうしようか…」 「純くん…あっちへ行ってみようよ…」 僕達が街のはずれの方まで来た時、一匹の綺麗な馬が木に繋がれていた。 この馬…何処か見覚えがあるような気が… そうだ!!確かさっきすれ違った青年の黒い馬に似ている。 「ヒ・ヒーン!!!ブルブルブル…!!!」 この馬…タテガミを少し振り乱して何か興奮しているようだ…よく見るとすごい汗をかいている。 今日は陽射しも強くてこんな炎天下に繋がれていたらそりゃ暑いんじゃないのかなあ…⁉︎ 僕はリュックの中からミカちゃんに飲料水のペットボトルを一つ渡した。 「ありがとう。」ミカちゃんは美味しそうに飲む。 そして僕のペットボトルを開けると…何故か視線を感じた…黒い馬がこちらをじっと見ている。 僕は水を半分飲んで、左の手のひらに水を汲む。「少ししかないけどよかったらどうぞ。」とその馬に飲ませてあげた。 とても美味しそうに飲んでいるのを見て僕とミカちゃんは二人で微笑んだ。 さあ、これからクレアさんの手掛かりをここでみつけないと…とりあえずクレアさんと同じ魔法使いを探そう。同じ魔法使いの人なら何か情報を持っているかもしれないと考えた。 僕には魔法使いや人間や守護神の違いがわからない。 ミカちゃんに城下町に魔法使いはいるのか聞いても 「んー。どれどれ?ここにはいないんじゃないかな?」 「ミカちゃん…本当に分かってるの?」 「えへへ…」 やっぱりよく分からない様子である。 仕方なく僕達は街を色々と見て周る… 何か手がかりがあるといいのだが… すると突然… 「すみません…そこのあなた… ちょっとお願いを聞いては頂けませんか…⁉︎」 屋台のお店の中から声をかけてきたのは赤ちゃんを抱いた若いお母さんのような女性だった。 「えっ?もしかして僕…⁉︎」 「そうです!!!ちょっと悪いんだけど、子供にミルクをあげたいの… 少しの間だけ店を見ててもらえませんか…⁉︎」 ミカちゃんは僕に笑顔で頷いた… 困った時はお互い様だな。 で、この店は何を売っているのかな? よく見るとリンゴが沢山ならべてある。 なるほど…これを売ればいいんだな。 「少しなら良いですよ…」 「ああ!!!助かるわ…ありがとう。 すぐに帰ってきますから…」 しかし…幸か不幸かお店にはお客さんは誰も来ないまま時間が過ぎてさっきのお母さんが帰って来た。 「ふう…ありがとうございました。 そうだ!!!お礼をしないとね…」 そう言って彼女はリンゴを三つほど袋に入れて僕に渡してくれた。 「そんな…あまりお役に立ててないのに。」 「ここは市場だから朝だけしかあまりお客さんが来ないんだよ。気にしないでね…本当にありがとう。」 人助けどころか…リンゴを貰ってしまった。 「このリンゴ…ミカちゃんと一つずつしても余っちゃうね… さっきのお馬さん、リンゴ食べるかな…?」 「じゃあ…あげてみようよ…」 僕達はさっきの美しい馬がいた場所へ戻った。 「これ…良かったら食べるかい…?」 早速お馬さんにリンゴをあげるとすごく美味しそうに食べてくれている。 よっぽどお腹が空いていたのだろうか…? その時…僕の背後(うしろ)から野太い声が聞こえてきた… 「なんだ貴様らは…人の馬になんか用か…?」 振り返ると王宮に向かう道で僕等を追い越していったあの青年がこちらを見ていた。 顔の下半分を覆っている黒いマントに黒い髪の… えっ…⁉︎黒い髪……⁉︎ 「あの〜すいません!!! ミカ達…クレアっていう、魔法使いのおばさんを探しているんです… 昨日、鎧を着た男達に連れて行かれちゃって… 王宮勤めの方ですか…? 何か…ご存…知… あ…!!!」 一体何があったのだろうか…⁉︎ ミカちゃんの表情が見る見るうちに青ざめていく… 「ど、どうしたの…⁉︎」 「私、思い出したの… あの日の夜…クレアおばさんを拐って行った鎧の男達のマントには紋章が描かれていたの…」 「紋章…⁉︎」 「それと全く同じなの… あの黒いマントに描かれている紋章が…!!!」 青年はこちらを(にら)みつけている… 「なるほど…そんなことを調べてる奴はただでは帰すことは出来ないな。」 そう言って青年は腰の剣を抜いた…
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