比べようのない愛情

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比べようのない愛情

「おーい…!!!」 丁度その時、クーファ国王が駆け付けて来た。 「…君達…凄い音がしたがどうしたんだ…⁉︎ それに純は…⁉︎ 一緒じゃ無いのか…⁉︎」」 ミカが慌ててクーファに駆け寄る。 「お願いです。突然…信長が現れて…」 「な…何だって…信長が…⁉︎」 「純くんと一緒に海に落ちて…お願いします…!!! 純くんを助けてください…!!!」 ミカの言葉を最後まで聞くかどうかを待たずにクーファは海に飛び込んだ… 泳ぎもオーケアノスで一番上手いクーファ国王であったが爆発による海中で純の姿を見つけるのは至難の業だった… 「純くん…」 ミカとリーエルが見守る中、なんとかクーファが純を抱いて地上に上がって来た。 クーファは純に蘇生術を施す… 「う…ん…クーファ…先生…」 純は目を覚ました。 クーファが「安心しろ。信長は影武者だった…ローゲンという魔王が信長に変わっていたんだ…」 それを聞いたミカとリーエルが純を抱きしめる。 「純くん…!!!」 「純…!!!」 …ギュムウゥゥゥ… 「い、痛いよ…ミカ…リーエル…」 「ゴ、ゴメンね…つい、嬉しくて… ねぇ…純くん…何で音叉を使わなかったの…」 ミカは純に訊いた。 「音叉…使わないほうがいいかなって… ミカとリーエルに聞きたいんだけど、音叉で覚醒状態になってる時って、ミカやリーエルは何を考えているの?」 「分からない…私の意識は失われているから… 遠くで自分自身を見ているカンジ…」 「あたしもだよ。」 「女王様によると覚醒状態になった時の二人の意識は〝ヴェラさん〟〝ユーリさん〟になってしまうらしい… 僕が魔王レックならそれでいい…嬉しいんだと思うけど… 僕は純…弥生純なんだ… そして僕と一緒に戦うパートナーはミカとリーエルだ… だからもう音叉は使わないようにしようと思う…」 純が起き上がろうと右手を地面についた途端に激痛が走った。 「…あぁぁぁぁぁ…!!!」 見ると純の拳は割れてしまって血が滲んでいる。 クーファ先生が治癒魔法をかけながら呟く… 「困ったなぁ。これではウルの弓の弦が引けんかもしれない…」 「そんな…」 ミカとリーエルの二人は心配した表情を見せたが… 純は「大丈夫…!!!何とかなりますよ…」と笑ってみせた。 純は世界樹の泉の水に手を浸して治療するために、グランアンジェ王宮に戻ることになった。 そして…… リーエルは荷物をまとめてみんなの前から消える決心をした。 自分は敵として純の前に現れて純を苦しめた。 そしてそんな自分を救ってくれた純の為にこれからは生きようと決心した… でも不器用で自分の気持ちを上手く伝えられないリーエルは他の可愛い守護神と比べて純に何もしてあげられないどころか今回、足手纏いになった上に純に怪我をさせてしまったことに心を痛めていた… このまま純と一緒にいてもまた迷惑をかける… 彼にはミカ達がいる…このまま…消えてしまおう… でも、でも…大好きな純の顔をもう一度見てから…とリーエルは世界樹の部屋を覗いた… 泉に右手を浸したまま…グッスリと眠っていた純の頬にリーエルの涙が一粒落ちた… 「う…ん…」 純は目を覚ました。 「リーエル…」 「あ…あっ…純…起こしてしまってゴメンなさい…」 荷物を持って…自分の側で涙しているリーエルを見て純は全てを悟った… 「リーエル…君…まさか何処かに行ってしまうなんていうつもりじゃないよね…」 「あ…あたしは…その…あの…」 純は左腕でリーエルを抱きしめて「リーエル…何処にも行くな…僕は君が大好きなんだ…!!!」と叫んだ。 大好きな純の言葉にリーエルは涙が溢れた…しかし… 「でも…私はみんなのように純とずっと一緒にいた訳ではなく…あなたに何もしてあげられていない…それに不器用で気持ちを上手く伝えられないし、可愛くない守護神なんだよ…あたしは…!!!」 そう純に告げた… 純は彼女を抱きしめたまま… 「僕…知っているんだよ… リーエルは美人だし、顔立ちとその性格からクールなイメージで見られがちだけど…誰よりも温かい心を持っているんだ… 僕が慌てて靴を脱いでしまっていても、君が黙って直してくれたり…洗濯したシャツも君が何も言わずに取り込んでくれた。日々の暮らしで言葉にはしないけど…自然に心の優しい君が大好きだ… 僕は…ミカやテラやリンと同じように大切な彼女として君が可愛いし、ずっと一緒にいて欲しいと思っている。だから何処にも行かないで欲しいんだ…!!!」 「ああ…」 不思議な気持ちだ… 胸が張り裂けそうに辛いのに熱い涙を止める事が出来ない… リーエルは生まれてからずっとこんなに自分を理解してもらえる人に出会ったことが無かった。 純の側で生きようと思ったのも純に対する感謝の気持ちがあったからである。 でもこの言葉でリーエルは心から純のことを愛している事が改めて分かった… この人さえいれば…自分は生きている意味があると思えた。 「ほら…君のだよ。」純はリーエルに音叉を手渡す… 「君を苦しめる奴を僕は絶対に許さない…」 「うっ…うっ…うわあぁぁぁぁぁぁん…!!!」 純が自分の為にこんな大きな怪我までして取り戻してくれた音叉を見て…リーエルは生まれて初めて大声で泣いた…
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