変化の魔法

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変化の魔法

「ちょ、ちょっと待ってよ…僕達は…」 青年は剣を振りかざしてこっちに向かって距離を詰めてくる… ウスラ笑みを浮かべたその表情… どうやら話して納得しそうな相手ではない… とにかくミカちゃんを守らないと!!! ミカちゃんを(かば)うように前に出た僕は…両手を大きく広げた。 「すみません…彼女の言った事があなたの気に触ったのなら謝ります。 でも… 彼女に手をあげることは僕が許しません!!!」 「許さない?何かお前勘違いしてないか?」 そう言うといきなり彼は剣を振った。 「ムン!!!」 「ウ…ウワッ!!!」 瞬間、僕の腕に熱い感触が…よく見ると肩の下あたりから血が吹き出している!!! まさか彼が真空の刃のような技で切ったのか…? 痛みがじわじわと後から押し寄せてくる… 「くっ…!!!」 RPGだとここは『回復薬』を飲む所だが… そんなものは有りはしない。 「きゃあっ!!!血が…」 僕の腕の怪我を見たミカちゃんは… 「よくも私の大事な純くんに怪我をさせたわね。 …絶対に許さない…えーーい!!!」 バシャァァァァン!!! 高々と振り上げたミカちゃんの指先に光が宿ったかと思うと、青年に向かって腕を振り下ろした… カミナリのような光の衝撃波が青年の身体に命中した… こ、これって攻撃魔法…⁉︎ 守護神としての彼女の能力なのだろうか…⁉︎ しかし青年にはダメージが全く通らない… 「そんなことでは俺は倒せないぞ。」 「くっ…ううっ!!!」 ミカちゃんは力を使い果たしたようにその場に崩れ落ちた。 僕は彼女に駆け寄る。 「ミカちゃん!ミカちゃん!しっかりして。」 他に彼女を救う術の無い僕は青年に向かって… 「あんたの力はよく分かった。 …だから僕だけにしてくれ。 彼女は助けてくれないか?お願いします。」 「一体…そのお願いに何の意味があるんだ…?」 彼は間違い無く僕らにトドメを刺すつもりだ。 僕はミカちゃんを抱え上げた… …コロン… その時…彼女が持っていたカプセルが僕の足元に転がった。 「これだ!!!」 僕はカプセルを開けてクレアさんが再起動をした時のようにミカちゃんを中へと戻した。 「待ったりぃな!!!」 突然…繋がれていた美しいお馬さんが可愛い女の子に変わった。 「もう…そんなもんで堪忍(かんにん)したったらどないやねん。ちゃんと謝っとるやないか…」 「うるさい。お前には関係ない。」 「関係ないやて…?ウチはアンタと契約してるんやで。」 「契約なんて気にしたことない。お前だけが契約の相手ではない。守護神などいくらでも代わりはいるさ…さあ!!!そこをどけっ!!!」 「あ…っつ!!!」 青年は女の子を突き飛ばした。 彼女は何も悪くないのに地面に叩きつけられた… お馬さんが女の子に変わって僕らを(かば)ってくれている。でも僕にはどうすることも出来ない。その場に立ち尽くすだけだった。 「痛いなぁ…この…アホンダラ!!!」 女の子は自分の手に炎の玉を宿して青年めがけて投げつけた。しかし…やはりミカちゃんと同じように剣の一振りで炎の玉は弾き飛ばされた。 青年は女の子を睨みつける… 「何て事を…お前、俺の守護神じゃないのか…?」 守護神?この子も守護神なのか? 「…うるさい。もうええわ!!! アンタあんた王子やからラッキーにも玉の輿に乗ったわ!!! …って思うたけどいい具合にクズ男やないか!!! この人ら見ててウチ悲しいなったわ。 この兄ちゃん…ホンマに彼女を大事にしはるで。 自分の命をかけて守って…アンタはどうや… 水も食べ物も与えてくれへん。 ウチ、アンタのために変化の魔法で馬になってここまでアンタを乗せて一生懸命走ったのに… あんたウチのこと、本当の馬のようにしか思ってへんやないの? この兄ちゃん、ウチにまで水くれたり、リンゴくれたり…ホンマに優しい人や。」 「じゃあお前も一緒にあの世に行け!」 青年は剣を振り上げた… 僕は頭がカーッと熱くなった。 僕の大事なミカちゃんに手を出したばかりか 自分を大切に想ってくれる守護神の女の子を… コイツ絶対に許せない!!! 青年が剣を振り下ろす… 真空波が女の子に向かって襲いかかった!!! 「危ない!!!」 僕は無意識のうちにその女の子の前に飛び出していた… そして、その刹那…僕は真空波を素手で掴む。 「なっ!!!」 そのままブーメランのように青年に向かって投げ返した… 「くらえ!!!」
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