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理想郷ミズガルズ
「…ええええっ…!!!そ…そんな…
私が…大臣だなんて…ムリムリムリムリ…!!!」
「アリスさん…
確かに大臣という名前を重く受け止められるのは理解りますが…僕みたいなヘタレで未熟者が国王ですよ…
それに比べたら…」
「じゅ…純さんは立派なリーダーですよ…
私が保証します…」
「僕だってすっごく無理してますよ…
でも…新しい国をみんなで作るにはそんな事にこだわってられないんです…
振り返らずに前だけ見て突っ走る…
そうしないと皆の前を走る事なんて出来ませんよ…
全てはみんなが笑顔になるために…
誰かが頑張らなくてはいけないんです…」
「みんなが笑顔になるために…」
純のシンプルだけど真っ直ぐ未来を見据えた言葉はアリスの心を震わせた…
しばらく考え込んで彼女は…
「そうですよね…純さんなんか国王様ですもんね…
私が大臣でも…それならいいかな…⁉︎
大切なのは気持ちですもんね…」
…アリスさん…ちょっと…酷くないですか…⁉︎
こうしてアリスさんにアースガルズの大臣になって戴いた。
すると…僕と一緒に女王様について国の運営を学んできたその高い手腕を最初から発揮してくださった。
グランアンジェをお手本として軍と国政、両方に精通している彼女は僕よりも国を治めるのに秀でている…
彼女の全てを尊敬している僕は彼女に負けないよう頑張って行こうと決心した。
アースガルズが建国されて一か月あまりが過ぎた。
少し前、僕は学校の先生に提出するよう言われていた進路調査票に本当の事を書いて提出した。
すぐに両親に連絡されて、両方からこっぴどく叱られた…
まあ…そりゃ誰も信じてくれないよね…
結局バックパッカーとして世界で見聞を広めたいという所で落ち着かせてもらった…
今日は女王様が初めての首脳会談をしようとグランアンジェ王宮に僕とアリスさん、クーファ先生、ジーク国王を招いてくださった。
「今日は忙しい中、皆にお集まり頂き感謝致します。実は以前、ジーク国王の父上の前エルドラ国王に申し上げたことをもう一度みんなで決めようと思っております。」
いつもの気さくな女王様とは違って今日は真剣な口調でお話しされている。
「実現までにはまだまだ時間はかかる事ですが、私達が国政を担っている今だからこそ話しておかなければいけないことがあります。
それは国境を撤廃し、一つの世界として暮らして行こうと言う事です。みんながますます繁栄していくために是非賛同頂きたく思います。」
僕とアリスさんは顔を見合わせて頷いた。
「女王様。実はアースガルズではもう、その理想の世界の名前を決めているのです。」
「ほう…それは何という名前ですかな…⁉︎」
「みんなが豊かに暮らせる世界…ミズガルズです。」
「…ミズガルズかぁ…!!!
いいんじゃないかな…女王様…⁉︎」
「エルドラは異論ありません…私も良いと思います。」
「では、理想郷…ミズガルズを作る計画を皆で盛り上げながら…これからこの世界にどんな困難が来ても皆で乗り越えて行きましょう…!!!」
僕の一つ目の夢はみんなのおかげでようやく走り出す事になった…
でももう一つの夢は果たして実現するだろうか…⁉︎
胸の鼓動が聞こえて来そうな位に僕はドキドキしている…
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