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ミズガルズに世界樹を
…そして結婚式から一年が過ぎようとしていた……
「もう…国王様…書類がまだ揃っておりませんよ…
これではアースガルズだけが遅れをとってしまいます。
今日のお昼までには揃えて頂かないと…」
「わ…分かったよ、アリス。頑張るから…」
アリスは真面目に頑張る純の顔を眺めている…
「純さん…あの…その…ち、ちょっと休憩しませんか…⁉︎」
「…ん……⁉︎
…そ…そうだね…休憩しようか…」
僕は何かソワソワとしたアリスに連れられて屋上に行く…
風が…僕とアリスの髪を揺らす。
「あの…あなた…
…コホン…その…私達…そろそろ…ね…⁉︎」
「えっ…何…一体どうしたの…⁉︎」
「ん…もう…!!!鈍感なんだから…
今夜…あなたの部屋に行っても良いですか…⁉︎」
真っ赤になったアリスに言われて…
僕も同じように顔が紅潮してくるのが自分でも分かった…
「えっ…⁉︎
…ああ…あの…いつでもどうぞ…!!!」
「あなたもそろそろ夫婦の生活にも慣れてくださいね…
きっと他の奥さんもそう思ってますよ。」
そう言ってアリスは優しく僕に口づけた。
「さあ、残りの仕事を片付けてしまいましょう…!!!」
「こら…アンタら…!!!
ナミさんの言うこと聞かなアカンで…!!!
ウチも先生やからな…ちゃんと言うこと聞いてもらわんと…
ウチの旦那さんなんかな、ウチが言うことをなーんでも聞いてくれはるんやで…」
「なあ…テラ先生…ウヒヒ…旦那さんとの赤ちゃんもうすぐ産まれるの…⁉︎」
「そ…それは…もうちょい先やな…!!!
先生の旦那さんは照れ屋さんやからな…
ようし、そろそろ子供作らへんかって言うてみよ…
赤ちゃん産まれたら連れて来てここであんたらと一緒に育てるわ…!!!」
リンは盾を構えた…
「ほら…そんなことでは何かあった時に備えられませんわよ。この盾を突き破る矛の勇者はいらっしゃらないのですか…⁉︎
私の旦那様は…私程度ではすぐに破ってしまいますわよ…」
「王妃様…流石は〝盾の戦乙女〟だねぇ…魔法も一流。我々…神族の兵士にも闘い方を教えられるのは…グランアンジェの女王様とオーケアノスのクーファ国王以外では…王妃様以外おられないよ…
さすがは『盾』の継承者だ…」
「こら…そこ…!!!
…何をコソコソ話しているのですか?」
「はっ…はい!」
「…ふう…旦那様…
あなたは今…何をしておられますかね…⁉︎」
グランアンジェ王宮の世界樹の間ではリーエルとミカがいつものように世界樹の世話をしていた…
そこへアンジェ女王様が顔を出した…
「おっ…やっておるな…!!!
…幹が少し大きくなったようじゃな…
そなた達のお陰じゃ…」
ミカとリーエルは黙って微笑んだ…
女王様は世界樹の幹に手を当てられた…
クララが見た記憶が蘇る…
「ヴェラ…今日は樹も風が気持ち良くて喜んでおりますわね…」
「ウフフッ…そうね…ねえ…クララ…ずっと一緒にここでこうしていたいわね…」
「ええ…姉様達と一緒に…出来ますわよね…ユーリ…」
「勿論。出来ますわ…私達の命は限りあるけれど、想いはきっとこの世界に残ってずっと繋がっていく…
今、私達が愛した想いは…たとえ過去のものとなっても現在を経て未来へずっと繋がっていく…」
…蘇ったあの日の言葉にクララは涙を浮かべた…
その言葉はミカもリーエルにも聞こえていた…
ミカは純のプロポーズを思い出した…
「そうか…純くんはこの部屋でずっと私を見つめ続けてくれた…だから純くんにも分かったんだ…真実の愛が…
そして…それを私に教えてくれたんだ…ありがとう…
純くん…ずっと愛しています。」
純は…現在起こす行動のアクセスが過去にも未来にも影響を及ぼす…
だから今を一生懸命…悔いの無いように一緒に生きよう…
それをパートナーのミカとリーエルに伝えたかった。
リーエルも…思い出していた…
月を見上げながら…私と純が話した事…
現在言わないと、過去も未来も意味が無くなることもある。
大切な事をちゃんと伝える事…それを純が教えてくれた…
言葉は違えど…純が二人…いや、五人の花嫁のことを同じように愛している…
二人の女神は純の思い遣りの心に涙を浮かべた…
そして…
女王様に笑顔で会釈をして彼の元へと向かうのだった…
やがてこの地がミズガルズと名前を変えても世界樹は成長していく…
次の命…そのまた次の命へと受け継がれて…
アースガルズの国王の机の中に純の高校の進路調査票があった…
そこには「第一志望 …自分が仲間と作った世界を支配すること」と書かれていた…
今日も…純…魔王レック…
いや、神王レックは世界を支配する…
…世界の人を「支」えて…心を「配」る…
彼なりのやり方で…
ガチャカプセルから飛び出したのは
とっても可愛い僕のカノジョ
完
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