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婚約者
「ほう…ではテラとやら…
そなたはかなりジーク…エルドラの王子の素性に詳しいようじゃな…
そなた守護神として奴の一味に加担しておったのではないのか…⁉︎」
一瞬でテラの顔色が変わった…
「ヤバい!!!そんなつもりで言うたんと違うのに…ウチはあくまでもこの兄ちゃん達に恩を返そうと思って…」
「違います!!!」
僕は二人の会話に割って入った。
「彼女は…そう!!!僕の大切な守護神で…
僕の大切な婚約者です…
彼女がジークの素性に詳しいのは…
昔、彼を信じて守護神として彼と付き合ったものの…利用され、酷い目にあわされたから…」
テラは驚いた…
「この人…ウチを庇ってくれてる…ウチはジークの守護神やった。言わば憎っくき敵やんか…何でウチなんかのために…」
テラは生まれてから今までずっと他人からこんなに大切にされたことは無かった…
純の優しい気持ちに涙が溢れた。
「なるほどな…しかし…近衛兵からそなた達は三人と聞いていたのだが…
もう一人はどうしたのじゃ…?」
「ああ…それはジークの守護神です。彼と一緒に姿を消したのです。」
「なるほど…そうか。あいわかった。」
女王様は指をパチンと鳴らして周りの衛兵に人払いをするように命じた。
部屋には僕ら二人と女王様だけになった…
「さて…すまぬがここからの事は決して口外しないでもらいたい。」
王女様の言葉に僕らは頷いた。
女王様は僕達にゆっくりとした口調で話し始めた…
グランアンジェとエルドラはかつてない戦争の危機にある。戦争と言っても一方的なエルドラの侵略と言っても過言ではない。グランアンジェは兵を送る気もないが、侵略には抵抗せざるを得ないと頭を抱えている。
そんな中、国中の魔法使いが誘拐されているらしい…エルドラの企みだろう。そこに、あの王子の行動。彼らは一体、何を企んでいるのだろう…?
「さっきの話ではそなた達は身内の魔法使いを取り戻すために動いておるとか…
わらわはエルドラの企みと動向を知りたいのじゃ…済まぬが手伝っては貰えぬだろうか?
協力してくれるのなら勿論、褒美ははずむぞ…」
僕は考えた。クレアさんはエルドラ王国のジーク王子の一味によって誘拐された可能性が高い。
彼女を取り戻すにはエルドラ王国に潜入するしか無さそうだ…
女王様は言い方は悪いがスポンサーみたいなものになってくれると言う。
勿論…スパイみたいなものだから危険はあるかもしれないけど…
「女王様。つきましてはお願いがございます。」
「なんじゃ?なんなりと申してみよ。」
「はい。女王様の部下の方でエルドラ王国に詳しい方をお一人…お借りすることは出来ないでしょうか…?
僕は全く相手のことを知りません。このままエルドラに行っても追い返されるのが目に浮かびます。」
「なるほど…あいわかった!!!」
女王様は何か一言二言唱えられた。
すると、床に光る魔法陣が浮かび上がる。
その中からクレアさんのようなローブを着たとても綺麗な女性が現れた。
少し襟足が長めのショートカットのサラサラの髪…歳は僕と同じ位だろうか…⁉︎
「王宮の中でも一、二を争う腕の魔法使い、アリスじゃ。彼女に案内させるとよい…
アリスよ…この者達に力を貸してやるのじゃ…」
「はっ!!!仰せの通りに…」
僕は道案内的な人をお願いするつもりだったのに…こんなすごい人を…これは嬉しい誤算かも…
「よろしくお願いします。」とアリスさんは笑顔で握手を求めてきた。
僕も「こちらこそ」と握手しようとすると…
テラちゃんが「ウチの婚約者やで。気安う触らんといてや!」とアリスさんに注意した。
そ、そうか…テラちゃん。ナイス演技だ!!!
これで女王様も信じてくれるよね。
女王様は「では、頼んだぞ…良い報告を待っておるからな。今日は部屋を用意させたから王宮で休み、明日エルドラに向けて出発するがよい。」と微笑まれた。
僕達はご厚意に甘えることにした。
「明日、朝にお部屋に伺います。
それまでゆっくりしてください。私に御用のある時は、アリスと心の中で呼んで頂くだけで参りますので…では。」
そう言うとアリスさんはまた魔法陣に消えていった。
…バタン…
僕はテラちゃんと部屋に入った。
「テラちゃんはこれからどうするんだい…?
ジークとはもう別れるの…⁉︎」
「当たり前や!!!さっきウチのカプセル回収したったわ…もう顔も見たくないわ!!!」と僕に真っ赤なカプセルを見せた。
「なぁ…」
テラちゃんが僕にその真っ赤なカプセルを手渡す…
「これからウチをよろしゅうお願いします…ウチの大切な婚約者様…」
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