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不思議な涙
ところが…
彼女は僕の差し出したルームウェアを受け取ることも無く、ボーっと宙を見つめていたのでそのままにしておく訳にもいかないので僕は無理矢理にでも服を着せることにした。
「ねえ…君…両手を挙げてくれるかな?」
彼女は暫く黙っていたが、やがてゆっくりと両手を挙げた。
なんとかスウェットの上を着せることが出来た…
さて…次は…
「ちょっと立ってこれを穿いてね。」
同じようにルームウェアの下をゆっくりと穿いた。
「ふう…これでいいや…ねえ…君は…⁉︎
…あれ…?」
服を着替え終わっても彼女はずっと立ったままである…
「…座らないの?」
質問に初めて彼女がゆっくりと口を開いた…
「…あなたは私が座ったほうがいいのですか?」
「だって…そのままじゃ落ち着かないでしょ?」
彼女はペタンと床に座った。
「ねぇ…君は一体誰なの…?」
「私は…ミカです。」
「ミカちゃんか…苗字は?」
彼女は一生懸命考えている様子を見せたが、やがて大きな溜息を一つ吐いて…
「すみません。分かりません。」
「…じゃあ…何処から来たの?」
「すみません。分かりません。」
…何を質問しても同じように深い溜息の後に彼女はそう答える。
…僕は犬のお巡りさんになった気分だ。
「あなたは…純くんですよね…?」
「う、うん…」
驚いた…この子…何故、僕の名前を…⁉︎
あれ……
純の瞳から溢れ出る涙が頬を伝って落ちていく…
…どうしてだろう…
両親の前でも泣いたことなんてなかったのに…
その時…
「泣かないで…」
ミカが純に寄り添って可愛い細い指で涙を拭う…
「あ、ありがとう…」
ミカは俯いて…
「ねえ…私の事……好き…?」
生まれて初めての女の子…
しかも超絶可愛い女の子からの質問に…
「う、うん…とても可愛いよ…」
ミカは少しだけ怒ったように…
「違うよ!!!ミカはね…
純くんがミカの事、好きかどうかが知りたいの!!!」
「そ、その…出会ったばかりだから…」
その答えも彼女が求めていたものでは無いらしく、
彼女のしかめっ面は治らない。
僕は彼女に笑顔に…いいや…彼女の笑顔を見たかったのだろう…
「ミ、ミカちゃんが大好きだよ…!!!」
その答えは一瞬で彼女にとろけるような笑顔を連れて来た。
「ウフフフフ…嬉しい!!!わーい!!!
ミカも純くん…だーい好き!!!」
喜ぶ彼女を見ていると…
本当に胸がドキドキと高鳴って…
こんな気持ち…初めてだ!!!
これが恋というものだろうか…?
僕は出会ったばかりの彼女に恋をしてしまったのだろうか…⁉︎
……ドクン!!!
刹那…僕の脳裏に雲を突き破り大空まで届こうかという大木の映像がフラッシュバックのように現れては消えた…
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