ケンカの相手

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ケンカの相手

お昼休み…学校の校舎の裏…誰も来ないような物陰で僕はポケットから赤いカプセルを出して… …パカッ!!! ボムッ!!! 「ファ〜ァ!!! やっぱり…ガッコはウチの肌には合わんわ… 退学して正解やったわ…」 「わーっ!!!テラ…服を着てってば!!!」 「しゃーないやん。ウチ…人間界の服持ってへんから…このビキニかローブしかあらへんよ…」 「と、とりあえず…これを着ておいてよ…」 僕はスクールジャージの上下をテラに差し出した。 彼女はジャージを広げてまじまじと眺める… 「ええっ…コレ……⁉︎」 顔をしかめて嫌々袖を通した彼女だったが… 「な、なんや…この服!!! 動きやすうて… ちょっとだけ純のニオイもして… ええやん…ウチ気に入ったで…!!!」 「…ニオイってとこが問題発言だけどね… ミカなら今ごろ『ムッカ〜』って…」 「ホンマや!!!あのヘナチョコ… 純のことになると… ジェラジェラ丸出しやからな…」 「アハハハハ…ハハ…ハ… …今頃…どうしてるんだろうね…」 「うるさい奴やけど…ウチも… 口ゲンカ相手がいんと…張り合いが無いわ…」 「ゴメンね…純くん…私…」 僕は俯くミカの手を取った… 「何言ってるんだよ!!! 君は正しいよ… 今はクレアさんと一緒にいてあげた方がいいに 決まってるよ…」 「う、うん…」 ミカは上目遣いでテラを見た… テラはニヤリと笑って… 「ヘナチョコ…心配せんでもええで… 純の世話はな、ちゃあんとこのウチがするさかい… アンタはな… 通い妻で…まあ…頑張り!!! ウチは毎日二十四時間…純と一緒にいるよってに… お風呂での事も…ベッドの中での事も… 純のことで分からんことは何でもウチに聞くとええよ… 本妻のウチにな…アハハハ…ハ…」 黙って俯くミカ… 「何や…アンタ…何とか言いや!!! アンタとウチはライバル違うんか…⁉︎ いつものように『ムッカ〜』 …って言うたらどうなんや!!!」 声を荒らげるテラ… 「…仕方ないよ…ミカ…純くんのこと… あなたに負けない位好きだけど… クレアおばさんの事…放っては行けないし…」 「……ほんなら…」 「えっ……?」 「ほんなら帰ったらええやないか… ウチはな… 自分一人で生きるために過去は全部捨ててきたんや!!! 幸せになるためにはな… 仕方がないことなんやって…」 「テラ…」 僕はいつも朗らかな彼女のあんな顔を見るのは最初で最期だった… 「なんか…ゴメンなさい… じゃあ…また…」 ミカは泣きそうな顔でカプセルを開けて… 緑色の光の中へ消えていった…
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