おかえり

1/1

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/125ページ

おかえり

ドアの前で立ち尽くすミカ… 目を閉じて…自分の気持ちに向き合い…深く頷いた彼女は、目を見開き、口を一文字に結んでドアを開けた… 「ただいま〜!!!」 「…おかえり…… おや…⁉︎今日は純くんと一緒じゃないのかい…⁉︎」 「う、うん……でも…ケンカした訳じゃないよ… あんな事があった後だから… おばさんを大切にしてあげてって…」 クレアは微笑みながら… 「そうかい…優しい子だね… ミカ…良い人と巡り会えて良かったね… じゃあ…今日は腕にヨリをかけて美味しいご飯を作るから手伝ってくれるかい…」 「…うん!!!」 「純…!!!聞いてるんか……⁉︎」 「あっ……ゴ、ゴメン!!!」 「コレ……どうや…ウチに似合うんやない⁉︎」 「う…うん…とっても似合ってるよ…」 「アカンわ…こりゃ… なあ…ヘナチョコ…アンタは… ああ…そっか……はぁ…」 何か物足りない日常… 少しだけ広くて静かな周りを感じると… つい、ため息が出てしまうふたり… 取り分け… テラは純に可愛い服を買ってもらっているのに… 本当なら…ワクワクドキドキするのに… それでも夕食の買い物といつものようにクッキーを買って…マンションの部屋へと帰って来た… …いくらミカがいないからって… 僕に付いてきてくれたテラに… こんなんじゃ申し訳ないよな……よし!!! 「取り敢えずさ…(ささ)やかだけどお祝いしようよ… テラが初めてこっちの世界へ来た…お祝い!!!」 「おおきに…そやけど…クッキーも買ったし… やっぱりアイツがいる時に…」 「うん…そうだね…」 部屋に入ろうと僕がノブに手を伸ばすと… ……ガチャ… 「おかえり〜!!!!!」 ドアの向こうからずっと見たかった笑顔が飛び出して来た… 「あ……」 「あ……」 …くんくん!!! 「あ、クッキーの香りだ!!! ねぇねぇ!!!純くん… いつものように…ご飯を食べてから…い〜い…?」 その笑顔はいつも側にあるものだと思っていた僕達は…失って…そしてまた目の前に現れて… 初めてどんなに大切なものかを知った。 「おかえりなさい…ミカ…」 「ただいま…純くん…」 「な…な…なんや!!!アンタ… おばさんと一緒にいるんや無かったんか…?」 「うん…クレアおばさんがね… 私はお嫁に行ったんだから純くんと一緒じゃなきゃ帰ってきちゃダメだって… 私…おばさんも大切だって言ったのに… そんな寂しそうな顔を見せる娘は、全然親孝行じゃ無いって… 私…そんな顔してたかなぁ…」 僕とテラは… ミカが自分達と同じ想いをしてたことが… 何か嬉しくて…おかしくて… 顔を見合わせて笑い出す… 「アハハハハ…」 「アッハッハッハ…」 「な、何よ…二人して… お土産の美味しいリンゴ… 分けてあげないよ〜!!!」
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加