素敵な名前

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「ミカ…テラ…じゃあ…行って来るね…」 カプセルに向かってそう呟いて… 僕は学校に出かける… 僕が学校に行っている間は…なるべくカプセルの中で過ごして欲しいと二人にお願いしたら… 「そやな…分かった!!! ウチ…ガッコはやっぱり合わんしな…家で純の帰りを待ってるわ!!! (はよ)う…帰ってきてな…」 「うん…ミカ…今はまだ無理だけど… そのうち料理を覚えて…純くんにご飯を作って待ってるようにするよ… 純くんも頑張ってね!!!」 と二人とも快諾してくれた。 彼女達によると守護神のカプセルの中は少し暑いのだが… エネルギー消費が少なくてお腹も減らないらしい… 「たっだいま〜!!!」 …カノジョ達が待ってる部屋に僕は急いで帰って…二つのカプセルを開ける。 「おかえり…純!!!」 「おかえりなさい…純くん…」 部屋に帰っておかえりって言ってもらえる… しかも二人の可愛い女の子に。 日常の中の非日常の出来事に僕は嬉しさを感じていた… そんなある日…ミカが突然… 「純くん、ミカ…ちょっとクレアおばさんに用があるから行ってくるね…」 「ん。分かった…行ってらっしゃい!!! クレアさんによろしくね!!!」 その日は休日… 不意にテラと二人きりになった僕は… 彼女にこの世界を案内してあげることにした。 「初めて…純とゆっくりデートやね!!! なんか嬉しいなあ…」 テラが僕の腕にピタッとくっついて離れない… 嬉しいんだけど…慣れなくてちょっと恥ずかしいなぁ… ふと、滑り台のある公園でテラが立ち止まった… 「ここ…ウチが小さい時に遊んだ所に似てるわ。 大きな桃の木の側に綺麗な小川が流れていたっけ… アハハ…実はウチ、親の顔を知らんのや… 物心ついたらウチと同じような子供と… ナミっていうおばさんと一緒に生活しててな… ほら…大きくなると食費やら何やら… お金がかかるやろ…? ウチはナミおばさんの家を夜中にこっそりと抜け出した行く当てのないウチを拾ってくれたのがジークやったんや…」 「…そう…」 「ウチがちょっとした魔法を使えると知ったジークはウチに優しくしてくれたから…この人に付いていこうと思うたんや… でもジークには他にもウチと同じような守護神が沢山いると知ってショックやった… ウチは騙されてたんや…でも…他の誰かの所へ行くアテも無かった… そして純と知り合った… それからウチはホンマに幸せや…!!! うるさいけど…あのヘナチョコもおらんよりはマシやしな…」 テラ…君はいつも明るいけど… 本当は寂しかったんだね… 「そう言えば…ウチの『テラ』って名前も…ナミおばさんがつけてくれたんや… 一体…どういう意味なんやろ…?」 「そうだね…『テラ』って言う言葉は僕らの世界では想像も出来ないすごく多い物の単位、つまり大きいっていうことなんだ。それとね…」 僕は足元にあった棒きれで地面に〝地球〟と書いた。 「地球と書いてテラ…地球っていうのは今、僕らがいるこの星、この世界のこと… 太陽が眩しくて、風が気持ち良くて、花が咲いて、鳥が大空を自由に飛ぶこの世界なんだ… どちらの意味も誰にも負けないくらい素敵な名前だと思うよ。」 そう言うと…テラは涙を浮かべていた… 「おおきに、純… ウチ、今まで心の何処かで親に愛情込めてつけてもらった名前が羨ましかった… ウチの親は本当はウチにどんな名前をつけてくれたんやろ…?ひょっとして名前も付けずにウチをほっぽり出したんやろか…とも考えた… でも今は…純がウチを全部受け止めてくれてる…ウチはホンマに幸せやで…ううう…」 彼女は僕の胸に飛び込んで…大粒の涙を流した… その時、頭の中に声が… 「純さん…!!!私です…アリスです… 女王様から伺いました… この間は大変失礼致しました…」 「いえ…そんな… ところで今日はどうされたのですか…⁉︎」 「あれから… 私なりにソリューの事を少し探ってみました… 一度…ご相談させて頂きたいのです… こちらへいらしては頂けませんか……?」
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