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故郷
そして次のお休み…
「へぇ〜ここが純さんのお部屋なんですね…」
アリスさんが僕達を迎えに来てくださった…
「アハハ…狭いところですけど…」
「いえ…私の部屋も同じくらいですよ…」
「姉ちゃん…
ここはウチと純の愛の巣やで…気安う来んといてや!!!」
「まあまあ…テラちゃん…
今日は純くんとデートなんでしょ…
器の大きなトコ見せなきゃだよ…」
「なんや…ヘナチョコ…
たまにはええ事言うやんか…
せやな…姉ちゃんは純の仕事仲間やし…
いつでもおいで…ウチがもてなしたるわ!!!」
「アハハハハ…」
しばらく四人で笑いあった後…
「じゃあ…行きますよ…」
アリスさんは僕に笑顔で会釈し、合図を送って来た…
僕達は異世界に瞬間移動した…のだが…
「あれ…ここは…」
王宮へと飛ぶものだと思い込んでいたテラは驚いた…
何故なら純が自分を連れてきたのは見覚えのある風景だった。幼い頃、登って遊んだ桃の木、魚を捕った川も見える。そしてあれは…あの家は…
「純…これは一体どういう…」
純はニコッと笑ってテラの背後に視線をやってそして会釈した。
テラはもう一度振り返る。そこには一人の女性が立っていた。涙が止めどなく流れる…
「おばさん…ナミおばさん…」
「おかえり、テラ…」
「なんで?…どうして…?」
「何日か前に…ほら…そこの男の人と王宮から魔法使いの女の人が訪ねてきてね…王宮でここを苦労して調べたらしくて、『テラちゃんは…またここへ帰ってきていいですか…?』と私に訊くんだよ…
もちろん帰ってきて欲しいって言うと、金貨がギッシリと入った袋をくれてね…」
「あ……」
テラは純が受け取ったあの袋を思い浮かべた…
「金貨一枚でも十分この家を立て直せるのに…
これでテラとみんなを笑顔にしてくださいって…
初めはこんなの受け取れないって言ったんだけど…
何度も何度も私に向かって頭を下げられてね…
『どうか…お願いします…いつまでもテラに故郷を与えてやって欲しい…』って…
あの人…アンタのいい人かい…?
すごい優しい人を捕まえたんだね。幸せだろう…あたしゃ嬉しいよ…」
そう言ってナミおばさんはテラの腕の中で泣き崩れた。テラも涙を拭うことなく思いきり泣いた…
二人でひとしきり泣いた後…テラはナミおばさんに尋ねた。
「いつでも…ここへ帰ってきてええか?」
「勿論だよ…」
ナミおばさんは涙を浮かべて頷いた。
「純……」
テラは僕のところに帰ってきた。
「おばさんの所に帰るかい…?」と訊くとテラは頭を横に振る…
「ううん…純が好きや…ずっと一緒にいたい。」
彼女は僕の胸に顔を埋めた。
僕がナミおばさんにもう一度会釈をすると桃の木の陰からアリスさんとミカが顔を出した。
テラは二人のところにも歩み寄って…
「二人とも…ありがとう…恩に着ます…」
そしてテラは僕の腕に抱きついて
「みんな…ウチに故郷をくれておおきに…」
と少し恥ずかしそうに呟いた…
「良かったね…テラ…」
僕はテラの涙を指で拭った。
「うん…」
テラが流している涙は今まで辛い思いをして流してきたそれとは違う温かい涙だった…
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