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完全敗北
「え…そんな…何処からでもって…」
僕は性急だったのと、相手が国王ということが何処か頭の中にあったのかもしれない…
闘いの気迫だとか闘志だとか言う以前に…少しの戦意も感じられない奴だと自分でも分かった…
そんな僕を見てクーファさんは…
「やれやれ、こりゃ大変なのを引き受けることになりそうだ。」
とため息を漏らした。
「これは俺が出る幕じゃないな。おい…リン…」
「はい…お父様…」
クーファさんの背後からさっきの女の子が顔を出した…
「お前が彼の相手をしてやれ…」
「分かりましたわ…」
ゴスロリの女の子…リンちゃんは僕に向かって
「私がお相手致します。」
と言うと突然、アリスさんの身体が水の球体に包まれた。
「ア…アリスさん…!!!」
「うっ…たす…け…て…」
アリスさんは必死にもがいている…
「私を倒さなければ…彼女の命が危ないですわよ…」
「酷いわ!!!あんまりだよ…」
様子を見ていたミカが能力を出そうとするが…
それをテラが制した。
「アカンで…なんぼアンタのヘナチョコカミナリでも落としたら中のアリスさんがダメージ受けてしまうで…ウチの炎も効かへんやろうし…」
アリスさんの表情が苦痛に歪む。
「君…頼むよ…術を解いてくれ!!!
アリスさんが…彼女は何も悪くないじゃないか…」
「じゃあ…早く私を倒されたらいかがですか…⁉︎」
リンちゃんは上目遣いに僕を見てニヤリと笑った。
僕は緊迫した場面に遭遇し、アリスさんの苦痛の表情、術を解かないリンちゃんにだんだんと怒りの感情が湧いてくる…
「うおぉぉぉぉぉぉ…
こんなの…こんなことって…!!!」
僕の腕にまた青い紋章が浮かび上がる…
その紋章の中にはこう書かれていた…
〝RHEA《レア》- REK 〟
「………!!!!!」
水の球の中からアリスは純の紋章を見て仰天の表情を浮かべた…
「そ…そんな…純さんが…」
同じく…クーファ国王も「コイツ…まさか…」と驚きを隠しきれない…
するとリンちゃんは何かを唱えて右手の甲に力を込め始めた。
「ううう…」
リンちゃんの腕にも赤い紋章が浮かび上がった…
「こ…この娘…紋章を!!!」
僕は怒りに任せて…と言っても女の子を殴ることは出来ないのでせめて投げ飛ばすつもりで彼女に近づいた…
するとリンちゃんは自分の周りに小さなバリアを張った…
「RE:FRAIN《リフレイン》!!!」
リンちゃんがそう叫ぶと小さなバリアは次々と増えていって…一瞬にして彼女の全方位を球体のように包み込んだ。
彼女に伸ばした手は…
…バチッ!!!!!
呆気なく弾かれる…
僕は彼女にふれることすら出来ない。
どうしようもない…
大切な人を守れなかった…
僕の完敗である。
自分の力の無さに絶望した僕は…その時…涙さえ流していたかもしれない…
突然……アリスさんを包んでいた水の球体がパーンと弾けた…
アリスさんはその場に倒れた…
リンちゃんは彼女に歩み寄って…回復魔法を唱えると同時に…また紋章の力を解放する…
「RE:FRAIN《リフレイン》!!!」
リンの唱えた回復魔法の光が幾重にも重なってアリスの身体を包む…アリスはゆっくり起き上がった…
「大丈夫ですか…?」
「……ええ……」
リンちゃんの言葉にアリスさんは残念そうに頷いた。
クーファさんが口を開いた…
「お前さん…女の子や戦意の無いものにはからっきしだねぇ…
いいか…感情が紋章の引き金にはなるが、感情に飲み込まれたらダメなんだよ…
アリスちゃん…いいか…⁉︎
コイツは俺が預かる…
みっちりシゴいてやるからよ。」
「そんな…ウチらはどうなんねん…⁉︎」
「…純くんを返してよ…ううう…」
不満を漏らすテラとミカをアリスさんが制する…
「お二人のお気持ちは分かります…
しかし…ここは…純さんと…あのクーファ国王を
信じてはみませんか…⁉︎
きっと彼を二倍にも三倍にも大きな存在にしてくれますよ…」
アリスのその言葉に二人の守護神は拳を握りしめながらも純を信じて…
クーファとリンに付いていく彼の背中を見送った…
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