魔王レック

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魔王レック

「クーファ国王様……あなたはまさか…」 「そう…隠す理由も無いからな… 俺の前世は剛神ディーン…またの名を…『最高神オーディーン』さ… ご覧の通り…俺も…純と同じ転生者だ。 ま、それが縁でオーケアノスの国王を任されてるんだけどな…」 クーファ国王は手を広げておどけて見せた… その頃…僕は、急にいなくなったアリスさんを探して森の中を歩いていた… 「あまり大きな声では言えないが…実は他の国王はソリューの国王から指名されてその地位についているのさ… お前さんのところの女王様も…エルドラの国王も神族出身だ。だから女王様も元締めのソリューの内政干渉は出来ないから…お前さん達にコッソリとお願いしてるってとこなんだろうな…」 「女王様の以前のお姿やあなたのお名前は私も存じ上げております… しかし…魔王レックとは… 一体…何者なのですか…⁉︎」 クーファ国王は重い口調で語り始めた… 「人が生まれるよりずっと昔の話だ…    神々が二つに分かれて闘っていた時代… この世界は一度…『終末の日』を迎えた…』 『終末の日……⁉︎』 「アリスさんとクーファ先生… 一体何処に行ってしまったんだろう……」 「終末の日を皆は『ラグナレック』と呼んだ… それが…魔王レックの二つ名さ…」 「魔王レックが…終末の日って…⁉︎ 一体…どういう事ですか……⁉︎」 その時…純は…二人を見つけた… 「おー…」 声を掛けようとしたが…二人の間にはとても入り込めない重い空気感が漂っている… 僕は木陰に隠れて二人の様子を伺うことにした… 「魔王レックは…誰もが恐れる魔界の王… その強さに…皆がおののき… 彼の周りには誰も居なかった。 もしも…彼の力を目当てに近づこう者が居たら… 黒く燃え盛る地獄の業火で一瞬にしてこの世から 消されてしまった。 ある時…彼は安らぎの光を見つけた… それは… ユグドラシルの方から… 聞こえたとても美しい歌声…」 「クーファ国王…!!! 一体…何の話をされておられるのですか…⁉︎ 私は純さんの…魔王レックの…」 …パキッ… 思わず足元の小枝を踏んだ音が響き渡った… 「純……!!!」 「じゅ…純さん…⁉︎」 「ぼ…僕が魔王…レック…⁉︎」 少しの目眩(めまい)に襲われた僕は後退りをしながら叫んだ… 「アリスさん…クーファ先生…!!! 僕が魔王…って本当ですか…⁉︎」 「違うんです…純さん…!!! これには…ワケが…!!!」 そう言いかけたアリスさんをクーファ先生は制した…そして彼女に向かって二度…首を横に振る… クーファ先生はすぐに冷静さを取り戻していた… 「ああ…本当だ…!!! 純……お前は紛れもなく…魔王レックだ!!!」 「お、教えてください…レックは…魔王レックは… 僕は…一体…昔…何をしたんですか…⁉︎」 クーファ国王は天を仰いで…そして純を真っ直ぐに見て言い放った…」 「レックは…魔王レックは… 『終末の日』に…ありとあらゆるものを… 己の業火で焼き払った…」 「己の…業火で…」 クーファ先生は一度頷いて…更に続ける… 「この大地(せかい)に生きとし生けるもの… 善人も悪人も…緑も花も…山に生きるものも…海に生きるものも… オレも…アンジェ女王も…そして… ユグドラシルまで…」 「ユグ…ドラシル…⁉︎」 「…世界樹のことです…」 泣きそうな声でアリスさんは呟いた… 「でもな…純よ…!!!」 僕を抱きかかえるかのようにクーファ先生は肩に手を置いた… 「オレはお前が嫌いになれない… いや、それどころか…リンとお前が仕合った時… お前の紋章を見て…涙が出そうになったぜ… ああ…創界神は…何故、オレの元へこの少年を…とな… 純……今は何も分からなくていい!!! オレを信じてくれ!!! そして…お前の運命の鍵を握っているのは… お前達を導いてくれているアンジェ女王だ!!! 今はその導きのまま…真っ直ぐ突き進め… そうすればきっと… お前がここに来た意味が見つかるだろう…!!!」 荒々しく高い波の海のような… だけど…内包する豊かな愛情を… 蒼く透き通ったその瞳から感じた僕は… 「分かりました…クーファ先生… どうか僕を鍛えて…強くして下さい… 大切な人を守れるように……!!!」
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