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守護神失格
「では…純さんの予選突破を祝って…細やかですが皆で乾杯しましょう…カンパーイ!!!」
「カンパーイ!!!」
任務中に不謹慎かもしれないと…
僕は遠慮したのだが…
アリスさんは
「良いじゃありませんか…
頑張った人に労いの言葉を贈るのと…
更なる活躍を皆で願うのはとても大切な事だと
私は思いますよ…」
そう言ってニコッと笑った。
彼女のその笑顔と言葉にはいつも救われている…
もしも…僕達が違うサポーターと違う任務を遂行しようとしていたら…果たしてこんなにみんなが団結して目的に迎えているだろうか…⁉︎
純とアリスはお互いに同じような想いを抱いていたのだったが…
団結して明日の決勝戦に臨む…その夜に上手く回っていた筈の歯車が少しずつ狂い始める…
その日の夜はリンが僕達に自慢の料理の腕前を披露してくれた…
「うーん!!!すごく美味しいよ…
修業の時もリンの食事が楽しみだったけど…あの時よりもずっと腕を上げたんだね。」
「あ、あの時は…私ったら…まだ旦那様の素晴らしさに気づいてなかったのですわ…
でも…もう…旦那様の胃袋は私が掴んでしまいましたわね…ウフフッ。」
「フン!!!確かに料理では負けたかもしれん…
…そやけどな…
このグラマラスなボディーと闘いではウチは負けへんで…
純を優勝に導くために秘策があるさかいな…
純…!!!残り後二回の戦闘は…全部ウチを選んでもらって結構やで…
ちょっと属性で有利やからって使って貰ったメイドに大きな顔されたら困るんや!!!」
「…なんですって…!!!」
「なんや…痛いトコ突かれて怒ったんか…⁉︎」
…エキサイトする二人にアリスさんは…
「まあまあ…一番大事なのは明日、純さんが優勝する事では無いのですか…⁉︎
気持ちが昂るのは分かりますが…その辺りで…」
「フン…!!!」
「フン…!!!」
途中で引き離された猛犬同士の喧嘩のように二人の腹の中は収まりがつかない…
「純くん…このスープ美味しいよ…フーフー。
はい、あーんしてね…」
「なあ…ヘナチョコ…アンタは純の男を上げる気はないんか…?
この際やからハッキリと言わせて貰うけど…
一番最初に純に見初められたからってええ気になってるんと違うか…⁉︎」
「あら…それに関しては私も同意見ですわ…
妻と名乗るからには…まず自分より旦那様を立てないといけませんわ…
皆に認められるように後ろから支える…
それが内助の功ではないのですか…⁉︎
何も考えていないようではいけませんわよ…」
「何や…メイド…分かっとるやないか…
さすがはウチのライバルやな…」
「あなたもですわ…
相手に取って不足はありませんわよ…」
二人に責められて俯くミカ…
「…えっと……私…」
「こらこら…二人とも…そんなこと言わないでね。
ミカもテラもリンも僕にとって本当に大事な人なんだよ…
そりゃ…女の子に迫られて少し恥ずかしい時もあるけど…家に帰るとお帰りと三人が迎えてくれて…いつも本当に嬉しいよ…」
「なぁ。純、そんなら次の相手にはウチがサポーターとして出るわ。
そして決勝の相手のサポーターはヘナチョコや。
これで三人が一戦ずつ純と一緒に闘う事になるやろ…⁉︎
純が優勝して…一番サポーターとして素晴らしかったパートナーになんか純からご褒美を頂戴!!!」
「ご…ご褒美…⁉︎」
「そうや…何でもええで。
彼女にサプライズプレゼントや!!!
濃〜いディープキスでも、一週間一緒にお風呂に入って洗いっこでも…なんでもええよ。
あっ!!!ウチがあげるっていうのもアリやな。
ウフフッ…ウフフッ…」
テラ…他のチョイスは無かったの…⁉︎
「見た目通りズルい方ですわね…
ま、私はもう結果を残しているので、よっぽどのことをしないと旦那様は私を選ぶに決まっていますけどね…
宜しいですわ…本妻の余裕を見せましょう…
ここは高みの見物と致しましょうか…
そして最後には旦那様が私を褒めて…濃厚なディ…ディープキスとやらをしてくださるだけで私は幸せですわ…」
あ…あのね…リンも乗っからないでよ…
ミカが僕の顔を見て、涙を浮かべている。
「純くん…ミ…ミカ…守護神だけど、本当に弱っちくてゴメンね…
純くんの戦いに参加しても…
多分足手まといになるだけだね…
ミカ、守護神失格だね…」
彼女は涙を浮かべて部屋を…そして宿を飛び出した…
「ミカ…待って…!!!」
僕はミカを全力で追いかける…
「あっ…危ない!!!」
「キャアァァァァァァァッ!!!!!」
ミカが飛び出した横から馬車が走ってきた。
僕はミカを抱きしめなから数メートル横に飛んだ…
「大丈夫かい…ミカ…⁉︎」
「うん…」
良かった…彼女に怪我が無くて…
「僕は君が一緒にいてくれるだけで良いんだ…」
「純くん…」
「さあ…一緒に帰ろうよ…」
「うん…」
僕が立ち上がろうとしたその瞬間…
「うっ……!!!!!」
どうやら馬車の車輪にくるぶしの当たりをぶつけてしまったようだ…
痛みはまだ我慢出来たとしても…足の感覚が無い…
これでは気の流れを全身に行き渡らせることも…
相手の技を避ける事さえ…
「純くん…どうしよう…
ゴメンね…ミカが悪いの…ミカが…」
足を引き摺りながら宿に帰ると…みんなが心配して僕に駆け寄ってきた…
僕が勝手に転んでしまったと説明したのだが…
僕達の間に漂う空気は最悪のものとなっていた…
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