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努力が生んだ勝利
翌日…ミカは自分のカプセルの中に入ったまま…出てこない…
僕が開けたら良いのかもしれないけど…
無理矢理開けても…いつものあのミカの笑顔が見られないと思うと、開ける気にはならなかった。
もし決勝に進出できたら…その時は僕が彼女の笑顔をまた見れるかもしれない…
彼女と一緒に優勝するように頑張ろう!!!
しかし…昨夜の怪我で足は思うように動かない。
アリスさんの治癒魔法とガチガチのテーピング…
テラのマッサージとリンの薬膳料理…
これだけ皆から応援して貰ってるんだ…
怪我が相手に知られる前に倒してしまわないと…
決勝戦は各ブロックから勝ち進んだ四名…
つまりこれが準決勝ということになる。
僕は赤いカプセルを握って…試合に臨んだ。
相手は熟練の賢者だった。かなり高齢にも見える。
僕は一礼して、構えをとる…
相手は距離を置いて高い魔法力で攻撃してくるようだ。炎の極大呪文を唱えようとしていた。
今の僕にはまずい相手に当たってしまったようだ…
この距離では流石にトライデントも届かない。
仕方ない…テラに撹乱してもらおう…
赤いカプセルを開けた…
ボワン…!!!
「純…ウチがアンタを勝たせてみせるからな…」
カプセルから出てきたテラはいつもと少し様子が違った…
「ううう…」
テラの左手の甲に紋章が浮かび上がった!!!
「RE:FLECT《リフレクト》!!!」
一瞬で僕の周りに薄い魔法力の膜が出来た…
賢者が放った極大魔法は…
「何っ…⁉︎」
魔法力の膜に跳ね返され…
そのまま賢者に襲いかかった。
「くっ…!!!」
ギリギリの所で賢者は避けたが…
僕はその一瞬で充分過ぎるくらいだった。
「ぬおぉぉぉ…トライデント!!!」
とうとう…
賢者を破って決勝に進出することが出来た…
「純、決勝戦…応援してるしな…
でも…アリスの姉ちゃんには悪いけど…
あんまり無理はせんとウチは準優勝でもええんやで…
ウチはサプライズプレゼントだけで…
ホンマに満足やから…」
「あら…あなたがプレゼントを…何故ですの…?
同じ一勝なら私と一緒じゃないですか…⁉︎
旦那様に決めてもらいましょう。」
「なあ…メイドカフェ…
アンタとウチでは試合にかかった時間が違うやろ…
多分ウチと純の試合は大会で最速勝利ちゃうか…?
質が違うっちゅうねん。」
試合を見ていたアリスはテラの勝利が嬉しかった。
大会前、テラはアリスを呼び出して…
「姉ちゃん…お願いします…どうしても純を勝たせてやりたいんです…ウチに紋章の使い方を教えてください!!!」
と言ってきた…
アリスは短期間では難しいと言って一度は断ったが…
テラの真剣な眼差し、真面目な反復練習に心を打たれた…そして…
「おめでとう…テラさん…」
大会ギリギリで紋章を浮かび上がらせたテラを心から祝福した…
決勝戦は午後から…ソリュー王宮内の特設闘技場に移動して行う事になっていた…
僕はテラとリンにカプセルに入ってもらって移動することにした。
純は緑色のカプセルをジッと見つめた…
ミカはまだ心を痛めているのだろうか…?
僕はミカの緑色のカプセルを掌で包み込んで…着ていたパーカーのポケットにそっと入れると…ポケットの中には何故か…部屋に置いてきた筈の音叉が…
僕は音叉を握りしめて心の中で祈った…
また…あのミカの…元気な笑顔が見れますように。
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