ライバル

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「純さん… このまま宿屋に帰るのは非常にマズイです… 私達の情報が漏れるとも限りません!!! 取り敢えず…何処か… 違う所で時間を潰してから…」 「分かりました…僕に考えがあります…」 僕達は大きな道路沿いにあるお店に入った。 看板には『jewelry shop』の文字が…… 「こ…ここは…」 「わあ……」 「キ…キレイ…」 「おお……」 店内の何処を見渡しても…ため息が出るような… キラキラと輝く光に守護神(カノジョ)達は酔いしれていた… 「いらっしゃいませ… どのような品をお探しですか…⁉︎」 すぐに僕らの方にキレイに着飾った店員が近づいてきたのだが… 「あーん…この緑の宝石…カワイイよぉ〜」 「アホやなぁ〜!!! 燃え上がるような愛には… この赤い石に決まっとるやないか!!!」 「世界一美しいオーケアノスの海の色を… ご存知ありませんの…⁉︎ 同じ色をしたこの青い宝石が一番ですわ…」 …ギャアギャアギャアギャアギャアギャア… …こ、このクソジャリども… どうせお金なんか持ってないわよね… 追い出してやろうかしら…!!! 店員がそんな事を考えていると… …ドン!!! 純は… 金貨が少し顔を見せた皮袋をカウンターに置いて… 「…これで彼女達に… 好きな物を与えてやって貰えますかね…」 「しょ…承知いたしました!!!」 店員は目を丸くして三人の守護神の元へと飛んで行った… 「あれ…遅いな… アイツらは絶対グランアンジェのスパイだと睨んでいたのに… ジュエリーショップに入ったっきり… もう二時間も………!!! まさか……⁉︎」 …バァン!!! サングラスをかけて純達を尾行していた男はジュエリーショップの中に乗り込んだ… 「おい!!! ここにいた四人の女を連れた男は…何処だ⁉︎」 「ああ…あの素敵な男性ですね… 若いのにみんなに宝石を買ってあげるなんて…」 「…何処へ行ったんだ…⁉︎」 「何ですか…あなた…ぶっきらぼうに… 先程…裏口から帰られましたわよ… 少しはあの優しい男性を見習ったら…」 男は店員の話も聞かず…裏口の方へ… ドアを開けると… もう…そこには誰の姿も無かった…。 「クソッ!!!やられた…!!!」 …城下町を見下ろす丘の上… 柔らかな風が吹き抜ける草原に僕達は寝そべっていた… 「ハァッ…ハァッ…ハァッ… もう追って来てないよね…」 「ハァッ…ハァッ…ハァッ…ええ…」 「ハァッ…ハァッ…ハァッ… こんなに走ったん…久しぶりやわ… …ちょっと待って…瞬間移動は…⁉︎」 「あっ…!!!!!」 僕達は五人で顔を見合わせて… そして笑った… ミカが胸の緑のペンダントを手に取って… 「…ありがとう純くん…ミカ…大切にするよ…」 テラとリンもそれぞれ…赤と青のペンダントを見つめる… 「なあ…純… 言い出しっぺのウチが言うのも何やけど… 今回、一番純の役に立ったんは誰がどう見ても… ヘナチョコやで… 純が頑張って貰った賞金で…ウチらまでこんな大事にして貰ってええんやろか…⁉︎」 テラの言葉に純はずっと微笑んでいる… 「あなた…まだ分からないのですか…⁉︎ 私は…最近少し分かってきましたわ…」 陽射しが強くなってきたせいか… リンは指をパチンと鳴らして黒い傘を挿し始めた… 「私…本当の旦那様を知るまでは… 女の子にデレデレして…なんて…だらしないと 嫌っていた時期がありました… 私の父も少し女性にだらしないところがありますから…」 リン… それってクーファ先生が聞いたら悲しむだろうな… 「でも…旦那様に出会って… 私は男の人には、持って生まれた『(うつわ)』がある事に気付きました… 私は…とんでもなく大きな器を持った男性を愛してしまったのです… 他の女性も放って置けないほど素敵な男性を… 勿論、私も女性だから…私一人を見て欲しい願望はあるのですが… 皆さん…旦那様が今まで私達を… 一時(ひととき)でも…一人でも… 反故(ほご)にした事がありますか…⁉︎」 リンのその言葉にその場の誰もが微笑んでいる… 「旦那様は… いつだって私を全力で愛してくださります… あなたも…ミカさんも… だから…」 リンは自分の宝石と同じ色の大粒の涙をペンダントに落としながら… 「私は旦那様の下さる愛情を… 全てありがたく頂戴して… その分…命をかけて旦那様に尽くします…」 リンは傘を放り出してその場で泣き崩れた… 僕はリンを抱きしめて… 「ありがとう…」と呟いた。 ミカもテラも涙ぐんでいた… そして…それを黙って見ていたアリスも… …なんか…ちょっと妬けちゃうなぁ… 私も彼の守護神だったらなあ… アリスが俯いていると…自分の目の前に彼が…純が…歩み寄ってきた… 「…じゅ…純さん……⁉︎」 純は黙ってポケットから… アリスの… グラン・プラチナのペンダントを取り出した。 アリスは目を丸くして… 「ど…どうして…何故…⁉︎」 「もう二度と…手放さないで下さいね…」 ああ…なんて…あなたは… グランアンジェを背負っている… 純とは任務で繋がっている… そんなアリスが背負っていた理性が… 全て吹き飛んだ… アリスは子供のように思いっきり泣きながら… 純の胸に飛び込んだ… 「あーあ…もう一人増えてしもうたやんか…手強いライバルが…」 「あら…でも…第一夫人の座は絶対…譲る気は無いですわよ…」 「うん!!!勝負だね… ミカも純くんが大好きだもん!!!」
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