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別れの前に
次の朝……
…ガチャッ…
朝食を食べに食堂に向かおうとして部屋を出た瞬間…
…ガチャッ…
同時に隣の部屋から出てきたアリスさんと鉢合わせになった…
「あっ…!!!お…おはよう…ございます…」
「…おはよ…ございます…」
お互いに気を遣いあっているのが分かる…
昨日のことがあって皆の間に気まず〜い空気が流れている…
誰もが何とかしたい…
何か言いたいのはよく分かるのだが…
言えないまま時間だけが過ぎて行く…
「ご馳走…さま…でした…」
それでも時間は過ぎていき…晩餐会の時間が近づく…
「じゃあ…純さんは国王に話しかけられたら直球で勝負してください。〝兵を出すってウワサを聞いたのですが本当ですか?〟そして相手の出方を見てみましょう…」
「分かりました。僕はそこまでが任務なのですね…」
「任務…」
アリスはしばらく考えこむ…
「アリス…さん…⁉︎」
「あっ…す、すみません…」
ソリューの王宮に招かれた僕は…
控室で晩餐会が始まるのを待っていた…
そして…国王の使いが部屋に迎えに来た。
「では、晩餐室にご案内します。」
二階の広いフロアに通される…
沢山の来賓の方々に圧倒されそうになるが、僕の招かれた席は決まっていたので…そこに着席した…
一際立派な席に座っている…小柄だが…隙が無く豪胆さを持った…
そう…まるでサムライのような男…
あれが…アリスさんから聞かされていた…
ソリュー王国の新国王…ローク…!!!
国王陛下の席の近くに女王様、クーファ先生が並んで着席されていた。
しかし…任務ということもあり、あまり目を合わせない方が良いと判断した僕はなるべく下を向いて座っていた。
いよいよ開始時間が訪れた。
司会によると…晩餐会の最初に国王から挨拶があるそうだ…
「皆様、今日は王宮晩餐会にお集まりいただきありがとうございます。国王のロークでございます。今日は武闘大会の優勝者を招いております。」
僕の頭上からスポットライトが当てられた…
咄嗟に四方に向かってお辞儀をする…
「どうか彼を讃えてやってください。
そして心ゆくまで今日は楽しんでお帰りください…」
国王の挨拶が終わるとソリューの上流階級の人達が僕に挨拶に来る…
「ご機嫌よう…君、強いんだってね…転生者かい⁉︎」
「え…ええ…」
なかなか国王と話す機会がない…
…このまま晩餐会が終わるのではないかと思ったその時…衛兵を引き連れたローク国王がグラスを持ってやって来た。
「この度はご苦労であったな…また腕を磨いて大会に参加して欲しい。若いのに…グランアンジェの騎士らしいな…」
「はい…今夜はお招き頂きありがとうございます。
国王様…一つ、伺いたいことがあります…」
「ほう…何じゃ?何なりと申してみよ。」
「ソリュー王国が他の国に侵攻するという噂を耳にしました。真偽の程をお聞かせ頂けますか?」
「無礼だぞ…!!!国王様に向かって!!!」
国王は衛兵を制して
「よいよい…そなた…何故ワシにそのようなことを聞くのじゃ?」
「私はグランアンジェの騎士です。自国愛があるのは当然です。」
「なるほどな、しかし心配しないでよい…ワシはそのようなことを画策してはおらぬ。そなたから女王陛下にも安心するよう伝えて欲しい。」
「ははっ…大変失礼を致しました。…後日そのようにお伝え致します。」
国王は僕に背を向けて去って行く。
そして…そっと側近の者を呼んで耳打ちをした…
星空の下…僕達はソリューを後にしようと城門の前に立って色々な事を思い返していた…
「じゃあ…三人とも…
カプセルに戻っていてくれるかい…⁉︎」
三人の守護神は笑顔で頷いて自分のカプセルへと戻った。
僕はアリスさんに向かって…
「すみません…あまり収穫は得られませんでしたね…」
そう言うと彼女は微笑んで…
「確かにそう見えるかもしれませんが…私は純さんが女王様が聞き辛いようなことを見事に代弁されたと思っています。
ローク国王のお言葉の真偽の程は分かりかねますが…誰かが一石を投じて反応を伺う事…
それが今回の任務の本質だったのでは無いのでしょうか…」
…知的で行動力もあり、自分の信の心についてブレない…
その上、思い遣りも人一倍強い…
そんな彼女に僕はきっと…憧れ以上のものを感じている…
「…ありがとうございます…アリスさん…
あなたと一緒に行動することが出来た事…
僕にとって本当に大切な時間でした…」
…トクン…トクン…トクン…
……言わないと…
一生後悔するわよ……アリス…
これからもずっと…あなたと…一緒に…
色々な困難や壁を乗り越えたいんだって…
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