美しい大木

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美しい大木

「い、一体…どうしたの…⁉︎」 「グスン…ミカね、壁の丸いダイヤルみたいなのを回したの… そしたら急に頭の上からお湯が…」 …あの…それがシャワーなんだけど… どうやら異世界にはお風呂はあってもシャワーは無いようだ… 僕はミカちゃんにシャワーの使い方を詳しく説明した。 …キッチンに戻ると可愛いミカちゃんの鼻唄が聞こえてきた… 僕はなんか彼女が可愛くていとおしくて… 思わず笑ってしまった… 「…ゴホゴホ…そうです… 昨日の夜からずっと熱が…はい!! …すみません…では失礼します… …ふう…これで学校の方は良し…と… …さて…じゃあクレアさんの方を… 僕は部屋の真ん中でミカと向き合って座った。 「ミカちゃん…少し思い出すのが辛いかもしれないけど…クレアさんを助け出すために必要なんだ… いくつか質問してもいいかな…⁉︎」 …ミカちゃんは昨夜の事を思い出して身をすくめたが僕に気を遣ってくれたのだろうか… ゆっくりと首を縦に振ってくれた。 「じゃあ…その時の様子を詳しく教えてくれるかい…?」 「私が二階に上がって… ベッドの中に入った時だったわ… バタン!!!って勢いよく下の部屋のドアが開いたと思ったら男の人の声が聞こえてきたの… 私、物音をたてないように恐る恐る階段から下の部屋の様子を見てみたの… 「…ここの家は魔法使いの女が一人暮らしと聞いている…貴様だな…⁉︎」 「ちょっと…何なんだい!!! アンタ達…人の家に勝手に上がりこんで!!!」 「問答無用だ!!!連れて行け…!!!」 「はっ!!!」 「ちょっと…何するんだい…離しなよ!!!」 「私…怖くなって急いで二階に戻って… ベッドに潜り込んだんだけど… このままじゃ…絶対にあの人達に捕まってしまう!!! そう思った時…怖くなって…涙が溢れて止まらなくなっちゃったの… …その時、突然…私の頭の中にすっごく大きな木の映像が浮かんできたの… 見た事もない木なんだけど…なんか懐かしい感じがして… 足元には綺麗な小川も沢山流れていて… うっとりするような綺麗な場所だったんだ…」 「大きな木…」 僕はこの部屋に初めて彼女が現れて… 二人で話した時の事を思い出した。 僕があの時に見た頭の中の映像… 美しい大木の映像を… 彼女も見ていたと言うのだろうか…? 「そしたらね…ミカ…すっごくビックリしたんだけど… その木の影から純くんがヒョコッと顔を出して… 『僕のところへおいで…』って言ったの…」 「ミカちゃん…」 「えへへ…ミカ…凄く嬉しくなっちゃって… カプセルを使って…ここへ… 大好きな純くんの所へ来たの…」 「ミカちゃん…」 なんて健気(けなげ)なんだろう… 普通の人間の女の子ではなくて… 彼女は異世界から来た…守護神(ガーディアン)… でも…こんなに可愛くて健気で優しい女の子を 僕は人間の女の子で見た事がない… 何とかして彼女の元の暮らしを取り戻さなきゃ… 僕は彼女の顔を覗きこんで… 「よく聞いて…ミカちゃん… これからクレアさんを探しに行こうと思うんだ。 ただ…闇雲に探しに出かけても僕は君の世界の事をよく知らない… 知り合いもクレアさんを除けば本当に君だけだ… だから…どんな事でもいい…手がかりになるような事を思い出せないかな…?」 「うん!!!ミカ…一生懸命思い出してみるよ… うーーん!!! うーーーん!!! うーーーーん!!!」 ミカちゃんは顔を真っ赤にして一生懸命に思い出そうとしているのは分かるのだが… プシューーーッ!!!!! 炭酸が抜けるように彼女はヘナヘナヘナと崩れ落ちて… 「ダメだぁー!!! やっぱり思い出せない……」
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