策略

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策略

「でも…一つだけ腑に落ちないというか…分からないことがあるんです… ジークは何故、グランアンジェやオーケアノスと同調せず、ソリューの手先となってしまったのですか…⁉︎ 女王様やクーファ先生の施策を毛嫌いする理由が僕には分からない… たとえ神族の兵士が多くとも…ソリューの侵略なんか三国の同盟があれば簡単に防ぐことができるのではありませんか…?」 純のその疑問に女王様は目を伏せてゆっくり切り出された。 「あれは十数年前かのう…この世界全土を飢饉(ききん)が襲ったのじゃ… 多くが農耕民族のグランアンジェと水産業をもつオーケアノスは備蓄や取引でそれほどの影響はなかった。 しかし、山岳地帯が多く、資源が圧倒的に少ないエルドラの前国王は他国に対して支援を申し込んだのじゃ… しかし、私やクーファ国王も自国の民を危険に晒すわけにはいかない。 そこで我々はある提案をエルドラにしたのじゃが…前エルドラ王はそれを良しとしなかったのじゃ。」 「なるほど…その提案とはどのようなものですか?」 「それはな……」 地下牢に続く階段を純と女王様が降りていく… ジークの囚われた牢の前で二人は立ち止まった。  気配に気付いたジークは二人を睨みつけた。 女王様が指をパチンと鳴らす。魔法の猿ぐつわと拘束具が外れた。 「これはこれは女王様と騎士様が揃って何の用だ。哀れな国の国王を笑いにきたのかな?」 「ジーク。一度だけでいい。一度だけ僕の話を聞いてもらえないか?」 「…俺に話すことなんかない…あっちへ行け…!!!」 「頼む…聞いてもらうだけでいいんだ。」 「…フン!!!」 ジークは目を閉じて背中を向けて…横になった。 僕はゆっくりと話し始めた… 「昔、飢饉の際に女王様とクーファ国王は前国王に提案を持ちかけた話は知っているだろう。」 ジークは大きく目を見開いて…その場に立ち上がると… 「そうさ、この女王とあのクーファは三国合併案を持ちかけた。しかし、急に気が変わって約束を反故(ほご)にしたのさ…」 「くっ…やはり…そうです…女王様。」 「全ては誤解からだったか…すまぬジークよ…」 「何だと…どういうことだ…説明しろ…!!!」 純の立てた仮説は…こうだった… 女王様とクーファ国王は三国を合併させてみんなでこの危機を乗り越えようとした。 そしてソリュー国王…当時は大臣だったロークがこの話を聞き…そしてとんでもない策略を企てた… 三国が一緒になると全てにおいてソリューを超えてしまう… いずれはソリューを自分のものにするつもりだった彼は 統治権がソリューから合併後の新国に移ることを恐れた… 合併案に関する問題を全て自分に任せるように三国に使者を送った…そして… 女王様とクーファ国王にはエルドラ国王が〝自国の誇りを守るために合併はしない〟と… エルドラには〝やはり合併は難しい。この話は無かったことに…〟と…嘘をでっち上げた… ジークは叫んだ… 「…ぬぬぬ… それこそ嘘だ…!!!でっち上げだろ…!!!」 「嘘じゃない…これを見ろよ…!!!」 純は…昔、女王様が受け取ったソリューからの親書をジークに渡した… ジークはそれを食い入る様に見た… 確かに純の言った内容と、ロークの判が押してあった… 「こ…この判は…本人の魔法因子が散りばめられた正式な判…つまり…本物だ…」 ジークは驚愕し…震えながら膝から崩れ落ち…今までの人生を根底から覆された哀しみに襲われた。 「お…俺と親父を落とし入れたのはソリューだったのか… 俺は今まで何の為に闘ってきたのだ…」 女王様はとても哀しい目をされた… 「私もクーファ国王も…エルドラ王の誇り高き想いを尊重したつもりだった…それがこんな仇になるとは… 異国から来た澄んだ目を持った若者がいなかったら…きっと我々は誤解したままでいつまでも争っていたとは… なんと(あわ)れな…」
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