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待ち望んでいた人
牢屋から外に出たジークは…ルーニーさんやアリスさん、リン達…守護神達の前で深々と頭を下げた…
「俺は許してもらえるとは思っていない…
ただ…男が信念を変える時には何らかのケジメが必要になる。まずは謝らせてもらいたい。今まですまなかった…」
リンはずっと目を伏せている…皆は黙ったままだ…
長い沈黙が続いた後…ジークは踵を返して部屋から出ようとした。
すると…ルーニーさんがジークの前に立ち塞がった。
「待てよ。お前さん何処へ行こうと言うんだ…⁉︎」
「エルドラ王の名において逃げる訳ではない…
ロークの首を取って…ここへ戻ってくるつもりだ…
その後で俺はどんな罰でも受ける。
己の罪を死を以って償おう…」
その時、ルーニーさんの拳がジークの頬にヒットした。
バァァァァァン…!!!
ジークは三、四メートル程後ろに吹っ飛んだ…
「バカ野郎……!!!死を以って償う…⁉︎
じゃあ…今、ここで死にやがれ…!!!
そして…死んだ気になって…
エルドラをもう一度立て直しやがれ…!!!」
「えっ……!!!」
「俺も…リンも…誰もお前を許すつもりはない…
だが…許すかどうか考えるのはお前と国の無事を今も心配している…エルドラの大臣や兵士や国民が安心して暮らせるように国を立て直してからだ。
エルドラの国民の笑顔に比べたらロークの首なんて誰も喜ばねえ…お前の自己満足なんか俺達は要らねえよ。」
「ううっ……」
その時、廊下の方が騒がしくなった。
「国王…ダメですって…!!!
傷口がまだ塞がっていませんよ…!!!」
「うるせぇよ…!!!もう大丈夫だって…!!!」
「全く…普通の人ならとっくに…」
こんなにも早く…僕達の前に待ち望んでいた人が現れた。
「クーファ先生…」「兄貴…」「お父様…」「国王様…」
みんなの目から熱いものが流れる。
「おいおい、色んな呼び方で呼ぶなよ。
どう返事していいかわからないぜ……ふう。
話は聞いたぜ。おい…ジークよ。純やルーニーの言う通りだ。
俺たち三国が連携して国民の暮らしを守ることが優先だ。ロークなんざその後で考えればいいことだ。
…あ痛てててて…」
「ク…クーファ国王…皆さん…本当にすみませんでした…」
言葉はシンプルだが…ジークが守るべき信念を取り戻したことはそこにいる全てのものが分かった。
先生にルーニーさんが肩を貸す。
「よっと。やっぱり俺の兄貴は不死身だわ…」
「当たり前だ…お前に貸してる金を返してもらわないとな…死んでも…死にきれんよ…」
「あ、兄貴…みんなの前で…勘弁してくれよ…⁉︎」
「アハハハハ…」
「ウフフフフッ…」
みんなに笑顔が戻った…
「良かった…本当にありがとうございます…旦那様…」
「うん…良かったね…」
リンも僕の胸でポロポロと涙を流して泣いた。
僕はリンを抱きしめた…
ストレッチャーに横になったクーファ国王が女王様に語りかける…
「なあ、アンジェ女王様よ…そのうちアイツにオーケアノスを任そうと思ったが…こりゃダメだな。アイツは一国の国王で収まる器じゃなさそうだ…」
「うむ…確かにな…」女王様は微笑みながら頷いた…
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