ぼくのたからもの

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ぼくのたからもの

…今から10年程年前のことだ… 夏の暑い日差しにも負けずにまだ幼かった小学校低学年の僕は神社の裏の川で遊んでいた。 「あはははは…わーい!!!」 蝉時雨が耳に響くのも気にならない程、川遊びは楽しくて同級生のタクトと一緒に川に入って土手を何気なく掘っていた。 すると丸い形の石が僕の足元にコロンと転がった。 僕はキラキラと光る水面に手を入れてその玉のような石を拾い上げた。 「なんだろう…これ?」 でも…きっと幼かった僕にはそういうものが珍しく宝物に見えたのだろう。 僕が他に何かあるか調べると、小さな棒が一緒に出てきた。先が二股に分かれている金属製の棒である。 僕はタクトに自慢する… 「やった!!! これ、きっと…すごいたからものだぞ!!!」 「ちぇ!!!いいなぁ…じゅんだけ!!! ぼくもさがそうっと!!!」 そしてその二つを家に持って帰って大切にクッキーの空き缶に入れるとフタにこう書いた。 「ぼくのたからもの」 そして僕は大きくなるにつれ宝物の記憶は薄れ、空き缶は僕の部屋の押し入れに片付けられたまま… 数年に一度、懐かしいなぁ…とフタを開けてタイムカプセル的に眺める程度の物となってしまった… ——そして時間が経ち、僕も十七歳となった。 僕の名前は 弥生 純。読書が好きな普通の高校生だ。 両親は共働きで通う高校が実家から遠いため、僕は、学校の近くに部屋を借りて一人暮らしをすることになった。 今日は引っ越してからなかなか片付けていない荷物の整理をしている…のだが… 昨夜遅くまで恋愛小説を読んでいた僕… 高校生になって周りは本当の意味での春だ… そう、青い春!!! 周りの友達にはカレシやカノジョが出来て僕は少しだけ肩身が狭い… あーあ…僕にも優しくって可愛い彼女が出来たらなあ… 「純くん!!!私はここだよ!!! 早く見つけてね!!!待ってるよ…!!!」 …まだ見ぬ僕の大切な彼女を夢見ながら… 僕はコックリコックリ舟を漕ぐ。 そして…ハッと気がついて頭を収納のドアにぶつけてしまった!!! 「あっ…痛てててて!!!」 その振動で棚の上のクッキーの缶がぐらぐらと揺れて…滑り落ちる… 「ガッシャーン!!!」 落ちた勢いで缶の(ふた)が開いた。丸い石と金属製の棒が宙を舞う。 金属製の棒はガラステーブルの枠にぶつかってキィーンという思わず耳を塞いでしまうような高い音を出した。 すると丸い石に無数のヒビが入って真っ黒の、そうちょうどガチャポンのカプセルのような球が出てきた。 その球は床に落ちてパカッと割れた…次の瞬間… ポンッと煙が出て… 中から可愛い女の子が現れた。 僕はビックリして… 「き、君は…?」 「う、うーん!!!」 彼女は気さえ失ってはいないが意識が朦朧(もうろう)としている様子だ… …でもよく見ると…この子… 僕が今まで出会ってきた女の子の中で… 間違い無く一番可愛いなぁ!!! しかし…もう一つ、僕は重要案件があることに気づいた…彼女が下着というか水着のような姿なのだ。 女性のそんな姿に全く免疫の無い僕は… 「わーっ!!! とにかく服を!!!そ、そうだ… これでも着てて…!!!」 僕は洗濯した自分のルームウェアを彼女に差し出した。
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