夢現に揺蕩いて

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『よ、晴翔。昼飯行かね?あと今日の授業またサボるから出席とノート頼むわ』 「……やっぱりかー」  同じ授業をとっている彼がこうして頼んでくるのは、この一月半で通算六度目。初回のガイダンスを除いて全てである。 『いいけど授業は出なよ。どうせデートとかでしょ?流石にサボりすぎ』 『んじゃ駅前で。いやいや晴翔クン。女の子と授業なんて秤にかけるまでもないだろ?』 『了解。流石樹クン、人間の屑ですね』  カチッと画面をオフにして、やり取りを終える。  彼、小林(こばやし)(いつき)とは高校の時からの仲である。  ちなみに小森というのは、苗字と名前を合体させたもの、らしい。樹って木じゃん?だから小森。なんて言っていたが、よく分からない。  とりあえず、予定が入ってしまったので準備を始める。  駅前というのは十中八九、大学の最寄駅のこと。樹も樹の彼女も同じ大学だしね。時間は決めないことが多い。ふらっと集まる感じ。  僕は一人の時間が好きだから樹の誘いも断ることが多いけど、今日は僕も樹に話したいことがある。  ささっと寝癖を直して顔を洗い、着替えて準備を整える。家を出たところで財布が随分寂しくなっていることを思い出したけれど、ノートの対価に支払って貰えばいいと考えてそのまま電車に乗った。  家から大学までは10駅以上あるので近くはないが、乗換がないので体感的には割と早い。  改札を出ると、男子大学生代表みたいなチャラついた服装の見知った男が立っていた。残念ながら非常に様になっていて、あいつがモテるのがよく分かる。ムカつくけど。見た目だけだからね、あいつ。 「お待たせ」 「よ、晴翔。ラーメンでいいか?」 「ん」  僕に気付いた樹が顔を上げてニッと笑う。くそ、イケメンだな。  ま、こんなのは見慣れてるのでダメージなんてない。全然。  それに、今回は女の子の扱いに慣れてそうな樹だからこそ相談してみようと思った。正直、僕だけで抱え込むには難題すぎる。  よく行くチェーン店の二人掛けテーブルに腰掛け、いつものメニューを注文する。僕は味玉ラーメンの餃子セット。樹はとんこつの半炒飯セットだ。味玉うまいよね。 「なー、晴翔。なんかあった?」 「んぇ、なんで?」  予想外で変な声出た。いや、なんかはあったんだけどさ、会って5分で分かるもん? 「いや、お前なら未読無視するかなって思ったからさ」 「あー、そういう」  完全に行動が読まれている。なんか癪だね、これ。てか分かってて連絡するのは何?Mなの?
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