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『あたしね、ずっと聞きたかったことがあるの』
『聞きたかった事?』
『そ!あたしのどこが好きなの?』
『それは……また、随分急な話だね』
『だって、最初があんなだったでしょ?勢いに押されただけで、本当はあたしのことなんとも、思って……ない、んじゃって』
『ちょっと、自分で言って自分で落ち込まないでよ。そんな事ないから』
『じゃ、じゃあ!こ、言葉にしてくれても、いーんじゃない……?』
『あー、まーそれは今じゃなくても、ねぇ?』
『言えないんだ!?そ、そうだよね……。やっぱり、あ、たしぃ……』
『あー待って!違う違う!分かった、ちゃんと話すから……ッ』
『……ぇっ、大丈夫!?』
『ぅ、く……ッ、これ、……!?』
『頭痛いの?病院行ーーぁ、』
『ーーしいなァ!!』
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「ーーッ!」
ばっとベッドから飛び起きる。荒く乱れた呼吸と、ぐっしょりと冷や汗をかいた身体。相当夢見が悪かったらしい。
飛び起きた姿勢のまま数秒、呼吸を整えて気持ちを落ち着かせたところで汗を流すためにシャワーを浴びに行く。
「……最悪だな」
普段から寝起きは悪いけれど、こんな目覚め方は生まれて初めてかもしれない。人って起きてすぐに活動できるもんなんだね。
今日は用事がないから一日家でだらけるつもりだったんだけど。なんかそんな気分でもなくなったな。ほんと最悪。
「……たまには散歩でもしようかな」
じじくさいとか言わないで欲しい。これでも歩くのは嫌いじゃない。街をぶらぶらしたり、海とかも意外と歩いてるだけで楽しいよね。
……海なんていつ行ったっけ?
まーいいや。
別に急ぎじゃないのでゆったり着替えて家を出た。
僕の家の周りは住宅街で、歩いていても面白くないので取り敢えず大通りに向かう。平日の昼前は人通りが少なく、人混みが得意じゃない僕にとっては快適だ。
しばらく何をするでもなく歩いて辿り着いたのは、そこそこ広い公園だった。子どもが遊ぶような遊具のある公園じゃなくて、それこそ散歩とかジョギングに使われるような自然公園みたいなところ。
夏に近づいてきた今は草木が生い茂り、ベンチにはまだ小さい子どもを連れた母親やお年寄りが座っている。
小さな子達が虫を捕まえたり駆け回ったりするのを見ていると、ふいに。
「……ッ」
『ーーーーっ!!』
酷い頭痛がして、脳裏に誰かの痛烈な叫び声が響いた。
砂嵐のように目の前に一瞬ノイズが走って、次の瞬間見えたのはこの公園と、飛び出す子どもと、赤い車。
はっとして痛みの引いた頭を上げると、広がるのは先程と同じ長閑な風景。何も変わらずさっきのまま、平和に……、いや。
一瞬だったから違うかもしれない。
けど。
もし、間違いじゃないのなら、まずい。
そう思った瞬間、僕は迷わず走り出していた。
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